起業するなら従業員コストを精査せよ
起業する場合、いかに少人数に抑えたとしても、一人や二人は従業員を雇う必要がでてきます。
そこで問題となるのは給与を含めた、従業員にかかるコストです。従業員を雇うことで会社の売上が上がっても、コストが大きければその分会社の経営が圧迫されます。
起業する場合、この「従業員コスト」を綿密に計算すべきではないでしょうか。雇用に掛けるコストを含め、人件費は一般的に給与として支給する額の1.5倍~2倍かかるといわれています。
翻って自分の会社の売り上げ見込みと従業員コストに加えたその他コストバランスは、ぜひ考えておくべきでしょう。
従業員コストとは
人件費がいくらかかるのか整理してみます。
まず給料と通勤手当はほぼ全員に支払うお金です。
従業員に支給するこれらのお金に加え、社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)の支払いが必要になります。
この額の目安は給料と通勤費を合わせた金額の15%程度です。
そのほか、手当、福利厚生費、教育費、交通費、設備費や維持費などその他経費を合わせると、給料の1.5倍から2倍程度が従業員コストの目安となります。
また従業員を一人増やす場合、給料の3倍程度の売り上げが無い場合、赤字に陥る可能性が高くなるといわれています。
これは会社の業態によって利益率、経費率が異なるため一概には言えませんが、新規で雇い入れる場合、雇用するためのコストに加え、教育費、管理費等が増えます。そのため長期的な視野に立ち、コストの負担と売上向上がどれだけ収益の獲得に役立つかを考えていかなければなりません。
従業員コストは投資と考える
コストと書けば費用感ばかりに目が行きがちです。とはいえ、従業員がいなければ会社の売上が倍増することはないのも事実です。
であれば、従業員はコストではなく、売上を促進するための要素とみるべきではないでしょうか。
人件費を費用ではなく投資と考えることで、雇用側、従業員側のモチベーションに変化が訪れます。高い給料、高い教育水準(セミナーへ費用の補助、教材費用の補助)、充実した福利厚生(住宅補助、食事補助)などの待遇面に加え、残業時間、あるいは退社時間を一定の時間で固定する労働時間の適正化を徹底すれば、高い生産性の実現性が高まるというアメリカの大学における調査結果もあります。
少なくとも従業員からすれば給料が低いより高いほうが好ましく、自分の能力を上げる教育機会が多ければ会社への満足度は高くなるはずです。残業時間が制限されていれば、時間内で仕事を終わらせるための最短工数を見つけ、効率的に働くメソッドを身に付けるでしょう。仕事の質の向上と、従業員自らが行うムダのカット、その結果として、「従業員コスト」をかければかけるほど、売上が倍々で増加する可能性が大きくなります。
自分を「コスト」として考えさせる
多くの従業員は自分を会社にとっての「コスト」とは考えていません。会社から給料をもらえるのは当たり前と思っています。そういう考えであれば、ダラダラ残業をして会社が支払う費用が多くなっても気に留めず、むしろゆっくり仕事をして残業代を稼ごうとする人も出てきます。そういったことが当たり前のように行われている職場の生産性は間違いなく低いと言えるでしょう。会社の将来的な収益獲得にとっても明らかなマイナスです。
もし仮に、従業員が自分のことをコストだと考えることができれば、どうでしょうか。自分が生み出したコストが会社を疲弊させ、将来的な給料を減らす、あるいはアップさせる機会を奪っている、それが可視化出来れば生産性は上がるのではないでしょうか。
そのためには会社の売上に関する情報開示と従業員のモチベーションアップの為の制度を整備することが必要となります。
従業員の側で自分のコスト管理を行ってもらえれば、経営者側の手間も時間的なコストも減っていくわけですから。