IaaS/PaaS/SaaS/DaaS、そしてXaaSの時代へ
「アズ・ア・サービス」という言葉は、IT業界ではよく聞く用語です。クラウド上で展開する、さまざまなサービスを指しています。一般ユーザーが、機器やソフトウェアを自分で持たなくても、クラウドを通してサービスとしてその機能を使うことができるというものです。
時代を遡れば、クラウドという概念が生まれる前から「ホスティング」と呼ばれるサービスがありました。システム管理者に代行して、社外でサーバの保守と管理を請け負う事業です。
ところが、インターネットが高速化し、仮想化技術の登場によって、クラウドコンピューティングは瞬く間に拡大しました。サーバの管理代行以外に「どの部分のサービスを提供するか」という観点から「IaaS」「PaaS」「SaaS」「DaaS」などの用語が生まれました。
あらためてIaaS/PaaS/SaaS/DaaSとは
よく使われる4つの「アズ・ア・サービス」を簡単に説明します。
IaaS(Infrastructure as a Service)
仮想サーバやネットワーク基盤などのインフラストラクチャーを従量課金制で利用でき、短期間でサーバを立ち上げられること、利用者の増減などシステムの拡張ニーズに合わせてシステム構成を簡単に変更できることをメリットとして打ち出したサービスです。「イァース」または「アイアース」と読みます。
PaaS(Platform as a Service)
アプリケーションの開発・提供には、サーバにネットワークだけでなく、用途に合ったさまざまなソフトウェア・ミドルウェアが必要です。そうした開発環境や実行環境、つまりプラットフォームを提供します。「パース」と読みます。
開発者は定められたシステム環境の中で、PaaSにあらかじめ用意されたPythonやJavaなどの言語を利用してスピーディに開発できます。開発環境を構築する手間が省ける一方で、IaaSに比べると自由度は限定されます。
SaaS(Software as a Service)
クラウド上でWebメール、グループウェア、オフィスで使われる表計算やワープロ、画像や動画の編集など、ソフトウェアを提供するサービスです。「サーズ」と読みます。
クライアントPCにソフトウェアをインストールしなくても、オンライン上で利用できるようになりました。
DaaS(Desktop as a Service)
デスクトップ仮想化システムとして、ソフトウェアはもちろんデスクトップ環境自体をクラウドで実現する仕組みです。「ダース」と読みます。
ユーザーは手元のクライアントPCからクラウド上のデスクトップにアクセスしてログインし、どこからでも、どのPCからでも同じ環境を使うことができます。
DaaSと関連してVDI(Virtual Desktop Infrastructure:デスクトップ仮想化)という技術もあります。VDIは、仮想デスクトップ提供サーバをシステム上に用意し、そこにアクセスすることで、どのPCからでも同じデスクトップ環境を使えるようにする技術です。クラウド上にあるDaaSとは異なり、VDIはサーバとクライアントがオンプレミスのシステム内に配置されている構成です。古くからあった技術ですが、サーバとネットワークの環境が著しく進化し、コストが大幅に低減したため、現在急速に普及および浸透しています。
現在クラウドで使用できる主なサービス
こうした「アズ・ア・サービス」として、現在クラウドで提供されているサービスの具体的な中身を整理します。
インフラストラクチャー
サーバのメモリやCPUとコア数、ストレージの容量を自由に設定できます。ファイヤーウォールやロードバランサーなどのネットワーク基盤も提供します。物理的なハードウェアに加えて仮想化の技術により、柔軟にスケールアップやスケールアウトができることが特長です。そのスケールの容易さから、ストレージサービスのみ切り出されているクラウドサービスも定番となっています。
セキュリティ
ウィルスやサイバー攻撃からサーバを守ることは、システム管理者にとって煩雑な作業です。この作業を低減し、外部からの脅威の監視やサーバの保護を一元管理できます。
バックアップ
災害時やテロ、不正侵入などの状況に備えて、複数拠点で自動的にデータをバックアップします。非常時の後には迅速に復旧し、BCP(事業継続計画)を実現します。
プラットフォーム
OS、ミドルウェア、データベース、言語など、アプリケーションの開発環境と実行環境を提供します。
アプリケーション、ソフトウェア
Webメールやグループウェアのような業務用ソフトウェアやCRM、ECの機能など、アプリケーションやソフトウェアを一般ユーザーにも利用できるようにします。ソフトウェアの場合、クラウド側でアップデートに対応します。
ユーザー企業から見て社外のネットワーク上にあるクラウドを「パブリッククラウド」、オンプレミスで構築するクラウドを「プライベートクラウド」と呼びます。現在は、それらを組み合わせて仮想化環境と物理サーバによって構築する「ハイブリッドクラウド」が主流です。また、さまざまなクラウド提供企業のクラウドを合わせていいとこどりで利用する「マルチクラウド」という使い方も出てきています。
働き方改革で注目される「アズ・ア・サービス」
クラウドの普及率の高まりは、社会環境の影響もあります。政府は「働き方改革」を進めています。プレミアムフライデーや残業時間を減らす長時間労働の是正といった側面が強調されていますが、「在宅勤務(テレワーク)」のような、オフィスにとらわれない多様な働き方も模索が広がっています。
在宅勤務の実施にあたっては、クラウドの活用は欠かせません。社内ネットワークから物理的に離れた自宅などの環境で、社内にいるときと同じように仕事ができることが効率的な作業を可能にしているのです。
例えばDaaSではクラウドの仮想環境上に仮想デスクトップを構築し、会議室や自宅など場所を選ばず、PCはもちろんタブレットなどあらゆる端末で、同じデスクトップが使えます。在宅勤務の際にはBYOD(Bring Your Own Device:私的端末の業務利用)で個人所有のPCを使うケースもありますが、DaaSであればPC側に業務データが残らないため、セキュリティ面にも強みがあります。
クラウドのサービスはXaaSへ
クラウドが主流になるにしたがって、もはやIaaS/SaaS/PaaS/DaaSの範囲を超え、インターネットを通じてあらゆる資源を提供する「XaaS(X as a Service:ザース)」という言葉が生まれました。
「XaaS」とは、クラウドによって提供されるさまざまなサービスの総称です。あらゆるシステムリソースがインターネット上の機能として使用ができるサービスで、「X」は未知数を表し、X=A, B, C・・・とZまでのあらゆるアルファベットが入ります。
現在クラウドで提供されている主なサービスは前述しましたが、このほかにも「MBaaS(Mobile Backend as a Service:モバイルアプリケーションの実行環境を提供)」や「CaaS(Container as a Service:Dockerコンテナのクラウドサービス)」、Windows 10のコンセプトで話題の「Windows as a Service」などのサービスが次々と出てきています。
XaaSには“全ての資源が提供される”という意味もありこの場合は「Everything as a Service」ともいいます。また、あらゆる資源のうちの“いずれか”を指す場合は「Anything as a Service」となります。
XaaSに関してはこちらの記事にも解説があります。「XaaSとは、クラウドサービス全般のこと」
包括的なサービスを提供するXaaSが登場する一方で、ストレージに特化した「STaaS」、バックアップに特化した「BaaS」(注・BaaSには「Backup as a Service」の他に「Backend as a Service」のように異なる意味の語もあるので注意が必要です。)のように、各企業が専門領域のサービスを提供するように細分化していく可能性もあります。
今後、IoTや人工知能の発展に際しても、新たな「アズ・ア・サービス」が生まれるかもしれません。
[2019年5月29日アップデート]
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