Googleは、アップルなくして商売はできない。
Googleは、アップルに年間30億ドル以上払い続けなければならないらしい。
何のために?
それは、「iPhoneのデフォルトの検索エンジン」になるためだ。
Googleは、iOSのデフォルト検索エンジンになるためにAppleに大金を払い続ける必要がある
CNBCが最初に報じたように、Bernsteinのアナリストの話によるとGoogleはSafariのデフォルトになるために年間30億ドル払っている可能性があるという。
(Tech crunch)
Googleの最大の弱みは何か、といえば応えるのは容易い。
それは「消費者の行動に直接に働きかけるハードウェア」を有していない点だ。
Appleはスマートフォンを有している。Amazonは巨大な物流のインフラを有している。
これらは消費者の行動に対して、直接的なアプローチが可能だ。また、大量の「消費者」を相手にも商売ができる。
それに対してGoogleが影響力を持つのは一貫してバーチャルな世界であり、顧客は殆どが法人だ。商売という意味では、AppleやAmazonに比べて脆弱なのである。
これは、SNSの世界で世界を統べる、Facebookにも同様のことが言える。
ともあれ、Tech crunchの分析でも、「GoogleはAppleに強く依存している」とされる。
これは未だにGoogleがAppleに強く依存していることを意味している。Googleの収益の大部分は検索結果ページの広告から来ている。そしてAppleは、スマートフォン市場のおよそ18%を支配している。
では逆に、AppleはGoogle無くして商売はできないのだろうか?
「AppleもGoogleに依存しているのでは?」
という反論は、正しいのだろうか。
そんなことはない。
AppleはGoogleが明日、無くなったとしても大した影響はないだろう。
検索エンジンには既に代替品がある。Mapも、メールも、フォトサービスも。
Googleの本質的な強さは、ソフトウェアサービスを、ほぼすべての領域に渡って有している、と言う一点にある。
したがって、現状のGoogleを皆が使い続けるは、それらのサービスをシームレスに提供できる「規模」だろう。
しかし、「規模」だけに頼る経営は、足元をすくわれやすい。
結局のところ、小規模な競争相手が、いつ大きなイノベーションをおこし、Googleの牙城を崩しにかかるかわからないのである。
おそらく、Googleの経営陣は、上のことを全て理解した上で、現在の事業をやっている。
「実は、最も脆弱なのはGoogleなのだ」と。
GoogleがAIの開発を急ぐ理由はここにある。
実際、AIは自らの弱点を知り、「デバイスからの開放」を唱える。
「次の大きなステップは『デバイス』の概念がなくなることだ。ゆくゆくは、どのような形態であれ、コンピューターそのものが、我々の日常を支えるインテリジェントなアシスタントになる。モバイルファーストからAIファーストの世界へ移行するのだ」
実用的なAIができれば、「デバイス」はなんでも良い。
インターネットに接続しているだけで、必要なすべてのサービスにアクセスできる、というわけだ。
しかし、これはGoogleの「奢り」でもあり、「焦り」のようにも見える。
おそらく近い将来に「AIファースト」の世界がやってくる蓋然性は低い。なぜなら人間は物理的な肉体を持ち、五感によって世界を認識しているからだ。
「攻殻機動隊」というアニメーションがある。
近未来、電脳化され、義体化された人類が、どのような生を享受するかを描いた作品だ。
その作品中においては、人類は「肉体」の軛から解き放たれ、肉体を持たずとも活動し、思考する。
AIが人格を持ち、「人とは何か」「魂とは何か」という根源的な問いかけがなされる。
Googleが志向するのは、まさにそのような世界だ。
「肉体を持たない人類」が生まれるその日まで、Googleは生き残ることができるのだろうか。
(Photo:sayo ts)