ロンドンにおけるフィンテック(FinTech)最新情報
皆さんは金融街と聞いてどんな街を想像されますでしょうか?おそらくニューヨークのウォール街をイメージされる方が多いと思います。The Global Financial Centres Index (GFCI) によると、実はロンドンが世界一の金融ハブと称され、2位はニューヨーク、3位はシンガポール、4位は香港、そして5位が東京となります。
そんな2大金融街であるロンドンとニューヨークの差は広がりつつあるようです。今回は、進化し続ける世界一の金融ハブ、ロンドンについて、その歴史から現地のフィンテックサービスまで様々な角度からご紹介いたします。
ロンドンがフィンテックのハブ?
ニューヨークの金融エリアといえばウォールストリートが有名ですが、ロンドンにも同じく金融で有名なエリアがあります。それが、ロンバードストリート(Lombard Street)です。このエリアは13世紀末頃から徐々に金融街へと変化し、この地からロンドンの金融は発展してきました。また、このエリアはシティ・オブ・ロンドン、またはザ・シティと呼ばれ、他の行政エリアとは異なり、深い歴史と独自の文化を持っています。
実は、あのエリザベス女王でさえも、ザ・シティーを訪問する際には、シティーの入り口にある門でロード・メイヤー(市長)に頭を下げシティーに入る許可が必要なのです。ニューヨークのワシントンDC、イタリアのバチカン市国同様、このエリアがイギリス、そしてロンドンの中で、いかに特異点であることがうかがい知れます。
そんな伝統を持つロンドンですが、戦後に荒廃し『欧州の病人』とまで呼ばれたイギリスを復興させたマーガレット・サッチャー氏によって、新たな金融街がつくられました。それが、シティの東側に位置するカナリー・ワーフです。
このエリアは低い建物が立ち並ぶロンドンとは一線を画し、シティーグループやHSBCホールディングス、JPモルガン・チェースなどの名高い金融機関の巨大ビルが立ち並びます。また、ここには、次世代の金融業界におけるスタートアップやイノベーター達を支援し、イギリスの経済を活性化させることを目的とした非営利団体『Innovate Finance』のオフィスもあるので、フィンテックのコミュニティが自然と形成されているようです。だからこそ、ロンドンはフィンテックのハブと称されているのではないでしょうか。
ロンドン発、注目のフィンテック・サービス
フィンテックのハブとなったロンドンについてご紹介させて頂きましたので、次に送金やオンライン投資など消費者の実生活に大きなインパクトを与えたロンドン発のフィンテックサービス3選をご紹介いたします。
1.Transferwise(海外送金サービス)
実はいままで留学生は高額な手数料を支払い、現地通貨に換金していました。それは伝統的な金融機関がかなり悪いレートで、多くの手数料を取って送金していたためです。この非効率性をITの力で省き、昨年事業拡大に伴い日本にも進出したのがTransferwiseです。
昨年から日本でもサービスを展開し、このサービスを使えば個人・法人で実際の口座への海外送金が最適なレート、そして数百円程度の少ない手数料で送金できます。これにより、海外送金が今までよりも安く、手軽に行うことができるようになりました。
2.Nutmeg(オンライン投資マネジメント)
2012年にサービスを開始したNutmegは「投資世界のAmazonになる」というスローガンのもと、一般消費者向けに資産運用サービスを提供しています。このサービスの最大の特徴は、従来の英国資産運用会社は5万ポンド(約750万円)以上の資産でしか相手にしてもらえなかった状況を一変させ、たった1,000ポンド(約15万円)から資産運用を可能にしたことです。既に国内でも資産運用業界の上位25位内に入り、事業をさらに拡大しています。
3.Paym(P2P送金サービス)
PaymはイギリスのP2P(仲介者を通さずに利用者同士を直接繋ぐプラットフォーム)送金サービスで、携帯の電話番号を指定するだけで個人または法人同士が無料で簡単に送金を行うことが出来ます。
例えば友人にお金を振り込む場合、その友人のスマートフォンの電話番号を指定し、金額を確定すれば迅速に振り込まれるというとても便利なシステムになります。このサービスにより、個人間または法人間の送金の手間が大幅に減ったといえるでしょう。昨今このようなオンライン上での送金サービスが世界中で増加していますが、イギリス国内ではPaymが広く知られているようです。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=4u3eJ9uBA9E
気になるBrexitと今後の動き
昨年世界を揺るがせたBrexitですが、今後ロンドンの金融にどう影響を及ぼすのでしょうか?ロンドンの歴史と現在の新潮流を見ても、今後Brexitの影響でシティが金融街としてのパワーを急速に失うとは考えにくいと思われます。
その理由として、①金融街としての長い歴史と世界にリーチできる金融システムを持っていること、②優秀な人材が集結していること、③フィンテックのような新しい潮流にも積極的にチャレンジしていることの3点が挙げられます。なぜなら、これらは現地の金融機関に務める人達の大半が感じていることだからです。
なお、現在世界中の企業がBrexit後のイギリスに注目しているようです。ドイツのドイチェ銀行はロンドン・シティにある新しいビルに拠点を構えることが決まっています。また、今年の8月に東京三菱UFJはロンドンにフィンテック研究拠点を設立し、欧州で情報収集を行うことを発表しました。
いかがでしたでしょうか?今回はロンドンのフィンテック事情をご紹介させて頂きました、今後、ロンドンはフィンテックのハブとして更にその勢いを増していくのではないでしょうか。
参照:
・“The Global Financial Centres Index 20”
・“三菱UFJ、ロンドンにフィンテック研究拠点 欧州で情報収集”