Appleのスクリーンタイムでスマホ依存や中毒を解消
「スマホがないと不安」というユーザーが増加し、スマホ依存症として社会問題化しつつあります。こうした背景から、シリコンバレーでは「デジタルウェルネス」という考え方が波及するようになりました。スマホ依存に警鐘を鳴らし、人間の健康に合わせて技術をリデザインしようとするムーヴメントです。
Appleでは、iOS 12から携帯電話の利用時間を分析する「スクリーンタイム」という機能を新たに設けました。アプリの利用やWebサイト閲覧の時間、端末を手に取った時間、通知の受信回数などを詳細に管理する機能が追加されます。
ここでは、まずスマートフォンユーザーの依存症や中毒の現状をリサーチデータから紹介し、スクリーンタイムの意義をあらためて考察します。
スマートフォンの利用時間は1日に3時間7分
世界最大級のマーケティング調査&データ分析会社である、ニールセン デジタル株式会社では、日本における2018年3月時点におけるスマートフォン利用時間の分析結果を発表しています。スマートフォン視聴率情報Nielsen Mobile NetView(ニールセン モバイルネットビュー)のデータをもとに分析したものです。
この結果によると、1日のスマートフォンの利用時間は1人あたり「3時間7分」でした。2017年の3月と比較して16分増えています。このうちアプリの利用時間は「2時間41分」で、前年度比17分の増加です。ブラウザの利用時間は「29分」で、わずかですが前年より1分減少しました。
上記から分かることは、スマートフォンユーザーはアプリに8割以上の時間を割いているということです。
利用しているアプリの上位は、第1位が「Pokémon GO」34分、第2位が「LINE:ディズニーツムツム」31分、そして第3位が「LINE」26分となっています。「LINE」は昨年より8分増加していますが、音声対応人工知能Clovaを搭載したスマートスピーカーの発売やビジネス分野における活用が影響したのかもしれません。
さらに1日のスマートフォンの利用時間で、SNSは「Twiter」が昨年の19分から3分減少して16分、「Facebook」も利用時間が減少しています。一方、YouTubeが昨年の10分から4分増加して14分になるなど、動画系アプリの利用が増えました。
ニールセン デジタル株式会社のアナリストは、利用時間の増加は今後も続くと予想しています。したがって、このままではスマホ依存症の増加も免れないでしょう。
スマートフォンの過剰な利用によって、若年層に与える影響が特に危惧されています。2017年に英国のRoyal Society for Public Health(RSPH)は、若者たちにとってSNSはタバコやアルコールよりも中毒性が高く、うつ状態、睡眠障害、サイバー空間でのいじめなどの問題が発生することを報告しました。InstagramとSnapchatが特に有害であると指摘しています。
■参考:Instagram ranked worst for young people’s mental health(英語)
https://www.rsph.org.uk/about-us/news/instagram-ranked-worst-for-young-people-s-mental-health.html
Appleのスクリーンタイムとデジタルウェルネス
こうしたスマホ依存症や中毒を配慮して開発されたAppleの「スクリーンタイム」は、アプリ、Webアクセス、端末を手に取った時間などを記録して、毎日または毎週の合計を詳細にレポートします。自分が何に時間を費やしているか把握することは、生活を改善する第一歩といえるでしょう。
既にこのブログでも、以下の記事でスクリーンタイムについて取り上げました。
■「iPhone使い過ぎ病」におすすめ、Apple スクリーンタイム
https://stg.capa.co.jp/archives/23228
■Appleが新機能を発表!「スクリーンタイム」その気になる使い方は
https://stg.capa.co.jp/archives/23239
上記で解説されているように、スクリーンタイムでは特定のアプリを個別またはカテゴリーごとに制限時間を設けられます。「SNSが気になる」「ゲームがやめられない」というユーザーは、カテゴリーで制限時間を設定すれば、その時間が近づくとアプリの種類に関わらず該当したカテゴリーに通知が表示されます。
保護者が子どもの端末を制限する機能もあります。なんとなく監視されているようで居心地の悪さを感じそうですが、自己管理が難しい子どもたちのスマホ依存症を防ぐためには有望かもしれません。
スマホ依存症の「未病」対策
iOS 12では、スクリーンタイム以外にも利用時間を制限する機能が追加されます。
「おやすみモード」は従来からありましたが、iOS 12ではさらに強化された「ベッドタイム」が追加されました。この機能をオンにすると、画面に月のアイコンが表示され、ロックを解除しても「通話」「メッセージ」「設定」の3つのアプリしか使えません。それ以外はブラックアウトの状態になります。通話のついでにSNSやゲームをやってしまうこともありがちですが、なんとなくゲームやSNSを始めてしまうことができなくなります。
医療では「未病」が」注目されています。スクリーンタイムのような機能は、スマホ依存症や中毒になる前に防ぐ意味で、医療における未病の考え方と同様に重要ではないでしょうか。
機能を増やすだけでなく、デバイス上で機能を制限して人間を守る技術が登場し始めたことは興味深いですね。
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