有機ELのメリットとは? 液晶と比較してここがすごい
有機ELは液晶に次ぐディスプレイとして注目を集めています。スマートフォン、テレビのディスプレイだけでなく、デジタルサイネージにも使われるようになり、身近になりました。
有機ELは液晶と比較して、どのような点で優れているのでしょう。
この記事を読むと、次の3つのことが分かります。
①有機ELの仕組み
②有機ELと液晶を比較、有機ELの3つの特長、メリット、デメリット
③有機ELを使った製品の現状
有機ELはみずから発光する
有機ELの正式名称は、やや長くなりますが「有機エレクトロルミネッセンス(organic electroluminescence)」です。炭素を主な成分とする有機化合物に電圧をかけると発熱せずに発光します。この現象を有機ELといいます。
ディスプレイを有機ELと呼ぶのは日本独自であり、世界では「OLED(Organic Light Emitting Diode)」の呼称が一般的です。OLEDは有機体(Organic)を使ったLED素子という意味になります。
したがって、厳密にいえば、有機ELは「現象」で、OLEDは「発光素子」の呼び名であり、異なる用語です。しかし、日本では素子も含めて有機ELと呼んでいます。有機ELとOLEDは、ほぼ同じと考えて差し支えありません。
有機ELディスプレイに使われる有機物には、ジアミン(Diamine)、染料原料としても使われる昇華性の結晶アントラセン(Anthracene)、有機物の陽イオンが鉄などの金属イオンと結合した金属錯体があります。これらに電流を流して電圧をかけると、みずから発光します。この発光は、ホタルの光と同じ原理といわれています。
液晶は、カラーパネルパネル自体が発光しません。そこで液晶と比較したときに、みずから発光することが有機ELの大きな特長です。
液晶ディスプレイは、個体と液体の両方の性質を持った物質である液晶に、背面から「バックライト」で光を当てて制御します。赤・青・緑のカラーフィルターを通して、画像や映像を再現しています。
ところが、有機ELディスプレイはカラーフィルターみずからが発光するため、バックライトが不要です。シンプルな構造のため、ディスプレイを薄く軽量にできます。さらに、ひとつひとつの画素の明るさを調整可能です。
ちなみに、みずから発光する素子を使ったディスプレイには、有機ELのほかに「プラズマディスプレイ」があります。希ガスに電圧をかけて放電させ、発生した紫外線によって蛍光体を発光させます。有機ELのように画素単位で明るさを調整可能ですが、放電スペースが必要なためスリム化に限界があります。さらに画素を小型化できないので、高解像度を実現できません。
4K放送が普及しつつある現在、高解像度の映像を再現はディスプレイの必須条件になりました。各社が高解像度4K対応と高画質を謳って、しのぎを削っています。一時期、注目されていたプラズマディスプレイの地位を有機ELが奪ったのは、素子の小型化、高解像度の映像を再現できる根本的な技術上の違いにありました。
有機ELのここがすごい、3つの特長
発光の仕組みを解説する上で、有機ELが液晶より優れている特長に触れましたが、あらためて有機ELがユーザーにもたらすメリットを3つの特長として整理します。
特長1:液晶より鮮明な黒の再現性
液晶ディスプレイではバックライトを使用しているため、カラーフィルターから光が漏れて、黒い映像が白けて見えます。しかし、有機ELディスプレイはバックライトを使わずに素子自体が発光するため、鮮明な黒を再現し、くっきりとしたコントラストの映像を再現します。
2018年12月1日に「新4K8K衛星放送」放送が始まりました。2020年の東京オリンピックでも4K8Kによる報道が予定されています。そこで鮮明な画像を楽しむために、4K対応の有機LEディスプレイを採用したテレビの競争が激化しています。
特長2:液晶より薄型・軽量化できる
一般的にテレビでは、液晶ディスプレイの場合、およそ7~10cmほどの厚さがあります。一方、有機ELディスプレイの場合、その厚さは1cm以下になります。チューナー部分などを合わせても、液晶ディスプレイよりも薄く小型化できます。
LGエレクトロニクスは有機EL市場の先陣を切って、2017年に最薄部分が3.9mmという有機ELを採用したテレビを発売しました。その薄さはもはや「壁紙」です。テレビスタンドを含まずに約7.6キログラムという軽量で、あまりの薄さと軽量のため、設置には2人で持ち、画面上部を持ってはいけないなど、繊細な扱いが求められるほどです。
特長3:有機ELは曲がる
有機ELディスプレイは薄さゆえに、曲げることができます。「ディスプレイを曲げてどうするの?」という人もいるかもしれませんが、デジタルサイネージなどに利用した場合、変形させることによって多彩な演出ができます。スマートフォンでは、大画面をたたんでポケットに収納する未来型の端末が考えられています。
▽有機ELスマホについてはこちら
毎年アメリカのラスベガスで行われる世界最大規模のITと家電の見本市「CES」において、2019年の最大の見どころは「曲がるディスプレイ」でした。特に韓国のLGエレクトロニクスのディスプレイは、使用しないときは丸めてボックスに収納できるという画期的なものです。中国のベンチャー企業Royoleでも、折りたたむことができるスマートフォン「FlexPai」を発表しました。
LGの巻き取るディスプレイは以下の動画で見ることができます。まるで手品を見ているようです。
有機ELのメリットはまだある
上記の他にも有機ELを使ったディスプレイのメリットはまだあります。たとえば、レスポンスが早いこと。液晶ディスプレイでは、レスポンスが追いつかずに動画を再生したときに画像が乱れることがありますが、有機ELのレスポンスは液晶よりも早くなるため、動画視聴のストレスを感じなくなります。
有機ELにはデメリットもある
液晶より有機ELが優れている印象ですが、もちろん有機ELにもデメリットがあります。消費者にとって最大のハードルは「高価格」でしょう。直射日光など外で見たときに、輝度が足りないために見えにくいこともデメリットです。持ち歩いて外で使うことが多いスマートフォンでは改良が必要です。
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有機ELを使った製品事情
有機ELの仕組みと特長を理解した上で、。実際にどのような製品が登場しているのか。それぞれの現状をウォッチしていくことにしましょう。
有機ELテレビ
価格.comの消費者による掲示板には「液晶テレビか有機ELかで迷ってます。」という口コミが目立ちます。登場した当初は高価格だった有機ELですが、各社が参入することによって、わずかに価格がこなれてきました。とはいえ、やはり液晶より高価で、有機ELを搭載したテレビの普及はまだ先のようです。
現在の主流は、いまだに液晶テレビです。液晶は既に安定した技術であると同時に、HDR(High Dynamic Range)に対応した液晶の4Kテレビも登場しています。だからこそ、有機ELか液晶か迷うところでしょう。
一概にどちらがおすすめとはいえずに個人の判断次第ですが、現状では、画質を優先するなら有機EL、価格と安定性を優先するなら液晶という見解が一般的です。
有機ELスマートフォン
iPhone X、iPhone Xs、iPhone Xs Maxに搭載された有機EL(OLED)ディスプレイは「Super Retina ディスプレイ」と呼ばれています。HDRにも対応し、従来のOLEDよりコントラストや解像度が高くなりました。コントラストの高い同じ画像が長い時間表示され続けるとディスプレイに焼付きが生じますが、焼付きも低減しています。
有機ELの4Kスマートフォンも登場し、日本では2019年夏モデルとなるソニーモバイルの「Xperia 1」が注目されています。6.5型、3840×1644ピクセルのディスプレイで、テレビのアスペクト比と比べると、短辺が516ピクセル短い21:9の仕様です。しかし、これはユーザーの閲覧や持ちやすさを考慮した上での結論だそうです。
有機ELデジタルサイネージ
東京の地下街、地下通路には、デジタルサイネージが林立しています。デジタルサイネージは、いわば壁に取り付けられているテレビ、動く広告です。
LGエレクトロニクスのページでは、JR博多駅の博多口コンコースに設置された36面の曲面有機ELディスプレイのほか、銀座ライオン、日比谷ミッドタウンなどの導入事例が紹介され、未来の屋外広告を垣間みることができます。紙の広告と異なり、夜間でも美しい映像を表示できます。テレビやスマートフォンのような個人利用はもちろん、有機ELのデジタルサイネージによって街が変わっていくかもしれません。
まとめ:ディスプレイは過渡期
液晶から有機ELへ。このトレンドは確実性があります。液晶より鮮明な黒の再現性、薄く小型にできること、折りたたんだり巻き取ったりできるなど、有機ELは画期的な技術であり、わくわくするような未来の可能性を秘めています。現在の主流は液晶ですが、これから一気に有機ELがディスプレイの主流になるかもしれません。
参考URL:
ソニーモバイルに聞く「Xperia 1」 21:9ディスプレイや3眼カメラから“あの疑問点”まで
主なサイネージ導入実績(LGエレクトロニクス)
[2019年6月20日アップデート]
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