Amazonが映画館の買収に参戦!将来の映画はこんな風に変わる
インターネット通販会社の「Amazon」は誰もが知っている会社です。今や、Amazonなしには買い物を考えられないという方も多いでしょう。ネットのイメージが強いAmazonですが、現在実店舗への展開に力を入れています。昨年には、アメリカのスーパーマーケットチェーン「Whole Foods Market」を買収しました。既存の産業とネットを組み合わせ、相乗効果を生み出すのが狙いと見られています。
さらに、8月にはアメリカの独立系映画館チェーン「Landmark Theatres」の買収に名乗りを上げました。買収が決まったわけではありませんが、Amazonが映画館のビジネスに興味を持っていることは間違いありません。Amazonは映画館の世界をどのように変えていこうと考えているのでしょうか。映画館の現状、そして将来と共に予想していきます。
Amazonが映画館の買収に参戦した狙い
インターネットの世界で確固たる地位を築いたAmazonですが、オンラインではできない販売方法があります。それは体験型の商品の販売です。例えば、レストランで豪華な食事を楽しむ、コンサートでアーティストの生の歌声を聞くというような体験は、インターネット上で決して実現できません。現実的な世界へ実験的に進出し、新たなビジネスモデルを模索していると考えられます。
Amazonは、2010年にテレビ番組や映画を製作する「Amazon Studios」を設立しました。もし映画館を買収できれば、制作する映画の流通経路を大きく広げられるでしょう。劇場とデジタル配信の両方をカバーすることで、映画界によりアピールできるようになります。
映画館は生き残りをかけて二極化が進む
現代の映画館は二極化が進んでいます。一つはより現実に近い形で映画を楽しめる映画館です。最近ではVRと呼ばれる仮想現実の世界を体験できる映画館が現れました。自分が向いている方向により映像が変わるので、まるで映画の中にいるかのような臨場感を味わえます。新たな体験を提供できるように、最新の技術を取り入れた設備への投資が進められています。
もう一つは、放映する映画に強いこだわりを持った映画館です。ミニシアターと呼ばれる小さな映画館は、放映する映画の選択に独自性を持っています。映画館を訪れた人は、今まで知らなかった映画を見て、素晴らしい映画を発見するという喜びを味わえます。
日本の映画館から見える現状の課題
映画館には、現状どのような課題があるのでしょうか。日本と海外の映画館を比較し、その課題を探してみたいと思います。海外で映画館に行った方は「日本の映画館とは随分違う」と思うでしょう。主に違うのは以下の三つの点です。
・チケットの価格
・映画館の雰囲気
・最新洋画の公開日
一つずつ、その違いを見ていきます。
まず、海外の映画館に行くと、そのチケットの安さに驚くはずです。例えば、アメリカであれば800円前後、東南アジアであれば500円前後、ボリウッドで有名なインドに至っては300円前後で見られます。日本の映画館チケットの標準価格は1,800円なので、大きな差を感じます。世界的に見ても日本の映画館の料金は最高水準です。
映画館の雰囲気も随分違います。例えば海外でコメディ映画を見ると、面白い場面では大きな笑い声が上がります。みんなと一緒に映画を楽しめるのは、映画館の醍醐味です。個人差はあるかもしれませんが、日本の映画館は音を立てていけない雰囲気を感じます。
ハリウッドなどのメジャー映画が、日本では遅れて公開されるのを当然に感じている方もいるでしょう。しかし、世界的には制作国のアメリカと同時に公開されるのが普通で、日本は洋画の公開日が世界で最も遅い国の一つです。理由には日本特有のマーケティング事情があるようですが、消費者にとってみれば早く見られるにこしたことはありません。
まとめると、チケットの価格を下げ、劇場の一体感を高め、最新の映画をすぐに見られるようにする工夫が映画館に必要といえます。
「シネアド」が増えれば価格は下がる?
チケットの価格を下げるためには、どのような方法が考えられるでしょうか。最近増えているのが、映画の上映前に映し出される「シネアド」と呼ばれる広告です。広告を増やせばそれだけ映画館の収入が増えるため、結果的にはチケットの値段を下げられるでしょう。
他にも東南アジアでは、企業がスクリーンをスポンサードするという新たな動きが見られます。Amazon等のインターネットで展開している企業は、広告の手法に様々なノウハウを持っています。映画においても、その経験を役立てられるはずです。
ただ、日本ではシネアドが増えているにもかかわらず、映画館の料金はあまり下がっていません。それには日本人があまり映画館で映画を見ないという理由が考えられます。海外に比べると、日本の映画鑑賞回数は随分少ないです。映画館で見る人が少ないと、チケットの料金は上がってしまいます。映画館は映画の新たな楽しみ方を提案し、訪れる人々を増やす工夫が必要でしょう。
アトラクション化する現代の映画館
ここまでの話だと映画界を斜陽産業のように感じるかもしれませんが、日本で最近5年ほど興行収入が伸びています。その要因となっているのが、映画のアトラクション化です。例えば、「IMAX」と呼ばれる映画上映システムは、より高品質な映像と立体的な音声を提供します。驚くほどの臨場感を体験できるIMAXは、シネマコンプレックスの売上を大きく伸ばしました。
さらに、「4DX」と呼ばれる映画上映システムでは、五感をフルに使います。嵐のシーンがあれば水しぶきや風を感じる、雷鳴がとどろけば劇場がフラッシュする、映画のシーンに合わせて席が揺れるなど、まるで遊園地さながらのアトラクションです。こうした体験を劇場の観客全員で共有することで、一体感を感じる映画館を実現できます。
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Amazonが参入すれば日本の映画館は変わる
例えば、Amazonはインターネットショッピングだけでなく、テレビ番組や映画を家で見られる「プライム・ビデオ」を展開しています。もし、Amazonが映画館業界に進出すれば、映画の流通経路を大きく広げるでしょう。海外で話題の映画が、すぐに日本で見られるようになるかもしれません。そうなると、洋画の日本での公開日は再考せざるをえません。日本の映画館も海外と同じ公開日になっていくでしょう。
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将来予想される映画館の姿とは
さらに、将来の映画館はどのように変わっていくのか予想してみます。まず、VRを体験できる映画館が現れたように、最新技術を取り入れる動きは継続されるでしょう。だとすれば、次に来るのは「MR」と呼ばれる複合現実です。MRはリアルとバーチャルの世界が相互に影響し合います。例えば、映画館にいる視聴者が動くことで、映画のキャラクターが反応するといった技術が考えられます。
また、まるで映画を見ているようなゲームが現れていることから、逆にゲーム性を取り入れた映画の形も考えられます。例えば、途中で選択肢が現れ、劇場に訪れた観客が選んでいくということもできます。選択肢が増えれば、同じストーリー展開になる可能性は限りなく低くなります。訪れるたびに新鮮な気持ちで映画を楽しめます。
最近の映画は「4DX」など体験型の傾向が強く、より映画に没入で切るようになりました。この動きはさらに進んでいき、様々な最新技術を取り入れた映画館が現れるはずです。映画館はAmazonが興味を示しているように、まだまだ大きな可能性を秘めています。将来の映画がさらなる進化を遂げることに期待したいところです。
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