国内におけるCADソフトの市場規模は?成長要因と今後の展望
最新CADソフトの普及は国内でも少しづつ浸透していると言われていますが、データを見るとよりはっきりとそのイメージをつかむことができるでしょう。
特に普段は目にすることのない海外事情を数字で見てみると、日本よりも先進的にCADソフトの運用が進んでいるようするがわかります。
①国内市場は右肩上がり
②サブスクリプション方式の導入が遅れる
③海外市場も巨大
CADソフトの国内市場動向
CADソフトの国内市場は、毎年右肩上がりに成長している様子が伺えます。
広がるCADソフトの運用
矢野経済研究所がまとめた市場調査によると、国内におけるCAD/CAM/CAEシステム市場は毎年5~10%の成長を続けており、2018年には前年比8.8%増となる3,785億円を記録しました*1。
2019年は消費税率の引き上げによって設備投資が落ち込み、市場の成長がやや鈍化する見込みと考えられています。しかしそれでも国内外のシェア拡大のあおりを受け、2019年も市場規模4,000億円を超える成長が期待できるとされています。
そもそも2019年における国内の製造業は、世界経済の伸長に後押しされ、設備投資にも積極的でした。
企業収益が最高値を記録するといったニュースも多く見受けられ、今後さらなる事業拡大を進めていく上で、CADソフトウェアの導入を実施していった企業も増えたと考えられています。
先行き不透明な時代とはいえ、事実として収益が伸長している今だからこそ設備投資を進められているとも言えるでしょう。
CADソフト市場規模成長の要因
CADソフトの市場規模成長に貢献したのは企業収益の伸長ですが、その背景には海外輸出の成長もあります。
海外経済の回復により輸出や生産に良い影響を与え、設備投資へとつながったとされ、製造だけでなく土木・建築業におけるCADの売り上げにも貢献しました*2。
上記のデータ市場データはCADに加えCAMやCAEも含めた数字となっているため、具体的なCADのみの売り上げは見えないところもありますが、この分野における成長は順調に進んでいると見て問題ないでしょう。
国内における今後のCADソフト市場の展望
好調なソフトウェア市場ですが、今後の展望についても見ておきましょう。
若干の減速はあり得るものの、成長が期待
CADソフトの市場規模は設備投資に企業がどれだけ力を入れられるかによって大きく変動します。
消費税率の引き上げによって歯止めがかかってしまうことが懸念されてはいるものの、それを上回る需要の増加によって、悪影響を最小限にとどめることも期待できます。
また、国内では東京オリンピックの開幕や、その後の建設ラッシュ、インフラ需要の拡大に合わせて、さらに設備投資が行われる可能性もあります。
もう少しマクロな側面で考えると、少子高齢化による労働者の不足は、企業のスマート化を推進し、新しいソフトウェアの導入にも積極的になることが予想されます。
景気の不透明感こそ拭えないものの、国内においてはそれを上回る労働者不足という課題が、設備投資の推進力となることが期待できるでしょう。
国内CADソフト市場の活性化に必要なこと
景気だけではなく、国内でCAD市場がさらに成長していくために必要な施策についても見ておきましょう。
クラウドサービスの浸透
現代の最新CADソフトの多くは、クラウドコンピューティングを前提としたサブスクリプション方式での導入が基本となっています。
しかしながら国内の多くの企業では、いまだにクラウドサービスの導入が進んでおらず、サブスクリプション方式への誘導がうまくいっていないことが、市場の拡大を妨げている要因になっているという意見もあります*3。
その背景には各企業がメーカーとのパートナー契約を結んでいることで、販売パートナーがサブスクリプションへの移行によって得られる恩恵が小さいことも普及が進まない理由としてあげられており*4、提供の形態をサブスクリプションに最適化したものへと移行するところから始めなければいけません。
成長のための要素
需要拡大の要因として期待できるのは、防災に向けた公共事業の増加や、MaaSの研究開発予算の増額も挙げられます*5
特に東京を中心とする関東地域では、大地震や津波に備えた防災事業が進み、地方においても海岸沿いでは津波対策の事業も積極的に行われています。
また、インバウンド需要の増大に伴う交通インフラの拡充も、地方では積極的に進められているため、土木・建築業は東京オリンピック後も引き続き大きな需要を保ち続けるでしょう。
CADソフトの国外市場動向
海外におけるCADソフトの市場動向にも少し触れておきましょう。
2023年には1100億ドルを超える規模に
世界のCADソフトウェア市場も大きな成長を見せており、2023年には110億ドルを超える市場を形成するという予測も発表されています*6。
高度な設計ソフトへの需要が集中し、クラウドベースでの運用が可能ということで、これまで導入を見送ってきた企業においても次々と運用が開始されています。
クラウドベースのアプリケーションは、コストパフォーマンスの面からベンチャー企業や、新興国におけるIT化の促進につながってきました。
東南アジア諸国のように経済発展が著しい国では、建築の需要が高いことはもちろんですが、次々に現地企業が設立される中で、初めからクラウドベースのツールを用いて運営がなされるケースも散見されます。
日本の大企業のよりもこういった新興企業の方が設備投資や最新技術の導入にも積極的なため、日本よりもシェアの拡大は早く進んでいくことになるでしょう。
3D CADソフトが人気の理由
また、2D CADよりも3D CADの方が大きな市場規模を形成しているのも興味深い点といえます*7。
その原因は、包装機械におけるCADソフトの導入が進んでいることにあります。包装機械の進歩に伴い、エンジニアにはより複雑な設計が求められることになるのですが、そこで役立つのがCADソフトというわけです。
実際、ソフトウェア事業者にとって実入りが大きいのも3DのCADソフトです。シミュレーションの精度や使いやすさといった、総合的な面からコストパフォーマンスの高い3Dソフトの開発が目下進んでおり、3D CAD分野における、さらなる成長が見込まれています。
おわりに
CADソフトの導入は、国内外を問わず各業界で進んでいます。
導入の背景にある要因や、それを阻害する原因については各国で異なりますが、それを踏まえたソリューションの提案も、各企業では行われているのが現状です。
出典:
*1 矢野経済研究所「2018年度のCAD/CAM/CAEシステム市場は3,785億円で前年度比8.8%増」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2288
*2 MONOist「国内CAD/CAM/CAEシステム市場、成長が若干減速するも2019年度は4000億円規模」
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1912/11/news019.html
*3 fabcross「CADシステム等の市場規模、2017年度は3637億円に」
https://engineer.fabcross.jp/archeive/180227_yanokeizai.html
*4 上に同じ
*5 *2に同じ
*6 モノWatch「世界のCADソフトウェア市場2017~2023:市場は150億ドルに到達 」
https://mono-watch.com/1658/
*7 上に同じ
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