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鹿島建設の「スマート生産ビジョン」が持つ強みとデジタルツインの可能性

建設業界は、働き方改革や人材の確保といった課題の解決に向けて、大きな変化が求められています。
鹿島建設はそんな課題解決の糸口として、業務のデジタル化を急いでおり、「スマート生産ビジョン」と呼ばれる取り組みに着手し、実践への導入を進めています。

鹿島建設のスマート生産ビジョンは何を目指しているのか、そして、このビジョンから始まるデジタルツインの取り組みには、どんな効果が期待されているのかについて、ご紹介していきます。

目次:
①鹿島建設の「スマート生産ビジョン」について
②デジタルツインとは
③鹿島建設とスマート生産ビジョンのこれから


鹿島建設の「スマート生産ビジョン」について

鹿島建設は2018年、建築の生産プロセスを大幅に刷新する、鹿島スマート生産ビジョンを策定し、今日まで実現を進めてきました。

「人とロボットの協働」がコンセプト

スマート生産ビジョンにおいて鹿島建設がコンセプトに据えているのは、「人とロボットの協働」です*1。
これまで作業員が行なってきた業務の大半をロボットへ移行してしまうことで、生産性の向上とともに品質の均一化を図ることを目指しています。

施工現場においては必ずしも人間が必要な業務が全てであるとは限らず、同じことの繰り返しを要求する作業も少なからず存在します。
鹿島建設では人がやるべき業務と人がやる必要のない業務を明確に分類し、後者についてはICTの積極的な活用によって、効率化することを計画しています。

ロボットや人工知能の登場は、人の職場を奪ってしまうという懸念も表明されてきましたが、鹿島建設においては人とロボットの役割分担を掲げています。
人が得意とすること、ロボットが得意とすることを明確に分け、それぞれに得意分野を担当してもらうことで、より働きやすい環境と、建設会社としてのパフォーマンス向上に努めるのが目的です。

スマート生産ビジョンに期待される効果

スマート生産ビジョンに期待されている効果は様々ありますが、一言で紹介するなら働き方改革に尽きるでしょう。
建設業界では深刻な労働者の不足が問題視されてきましたが、これには建設業界の重労働で休みが少なく、生活や身体への負担が大きな業種であるというイメージが少なからず存在しています。

実際、現場によってそんなイメージ通りの労働環境であるケースも見られますが、これを刷新し、誰もが働きやすい環境を実現するというのはスマート生産ビジョンです。
ロボットの導入による作業労働の自動化はもちろん、危険が伴う作業もロボットが代行することで、現場作業員の身体的な負担を大きく軽減する効果が見込まれます。

また、熟練労働者の不足によって、作業の品質や人材教育レベルの低下も建設業界では懸念されてきました。
しかしこれらもロボットの導入により、その分野における人員配置や教育を不要にしてくれているのです。

適用工事は増加中

「作業の半分はロボットと」を掲げるスマート生産ビジョンは徐々に適用が進んでおり、その一例としては溶接ロボットの導入が挙げられます。
鹿島建設が現在導入を進めている溶接ロボットは、導入開始後もアップデートを繰り返しており、そのパフォーマンスは常に向上を続けています。
溶接量が多い大型鉄骨柱の溶接を行う新型ロボットの開発にも成功したことで、その活躍の場はさらに広がっていきました*2。

また、溶接技能者は近年人材が不足傾向にある分野でもありましたが、ベトナムからの技能実習生を招くことで採用と育成を強化し、今後のさらなる活躍が期待されています。
2020年5月現在、溶接ロボットの適用は2016年以降で15件にのぼるということです*3。

国内におけるデジタルツインの現状

スマート生産ビジョンは建設業界の課題を解消するだけでなく、新しい建設のあり方を提示する上でも注目されている取り組みです。
中でも注目を集めているのが、デジタルツインの実践です。

デジタルツインとは

デジタルツインは、現実世界の建設データや街の環境情報などを全て取り込み、仮想空間に現実と全く同じ環境を構築する手法です。
現実世界で実施予定の工事などのシミュレーションを極めて正確に行うことができ、施工の生産性や品質の向上へ大いに役立つと考えられています。

スマート生産ビジョンにおけるICTの導入は、デジタルツインを実現する上で欠かせないプロセスでもあります。
働き方改革はファーストステップに過ぎず、このビジョンがもたらす成果は建設業界のイノベーションに直結するかもしれません。

デジタルツインを実現する鹿島建設の「K-Field」

鹿島建設におけるデジタルツインの具体的な取り組みとしては、建設現場への「K-Field」の導入が挙げられます。

これは搬入した資機材の一つ一つに安価なビーコンを設置し、それぞれの位置情報をリアルタイムで把握することができるシステムで、現場の状況を詳細かつ迅速に見える化することが可能です*4。

建設現場で実際の建物が組み上がるとともに、デジタル上にもリアルタイムで建設の様子が逐一記録されることで、効率的な作業員の配置や施工プロセスの改善を進めていくことができるようになります。

すでに名古屋や横浜での開発プロジェクトに導入されており、管理業務のリモート化を従来よりも高めることに成功し、建設業界のオフィスワーク化の促進につながっています*5。

鹿島建設とスマート生産ビジョンのこれから

鹿島建設のスマート生産ビジョンはまだ始まったばかりですが、今後数年で大きな躍進を期待することもできそうです。

コロナ禍でも強みを発揮したスマート生産ビジョン

スマート生産ビジョンによる業務効率化は、デジタルツインの実現や働き方改革の推進だけでなく、感染症対策の側面でも注目されています。
施工業務のリモートワークが実現したことや、作業員の管理を詳細に行うことが可能になったことで、現場における感染リスク回避につながっているためです*6。

予測がつかないコロナショックの余波ですが、建設業界にとってはDXを推進する良い機会にもなっているとも考えられており、鹿島建設に至ってはスマート生産ビジョンの推進が、そのままコロナ対策につながっているようです。

ハード・ソフトの両方で改革を促進

鹿島建設のスマート生産ビジョンでは、2024年度までに前述の「K-Field」を全施工現場に導入し、完全デジタルツイン化を目指しています。
そのためには、IoTセンサーやロボットの導入といったハード面だけでなく、リモート管理が可能なシステムの開発や、BIM環境の整備など、ソフト面の拡充も必須です。

実績を積み重ねながらその効果を検証し、いずれ全面的な導入が速やかに行われることになるでしょう。

おわりに

鹿島建設が見据えていた建設業界のビジョンは、結果的にはウィズコロナおよびアフターコロナの世界における建設業界のあり方を提示するものでもありました。
働き方改革の実践やデジタルツインの実現により、日本で最も先進的な企業に生まれ変わる可能性にも期待したいところです。

 

 

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出典:
*1 鹿島建設「建設分野の現在地」
https://www.kajima.co.jp/news/digest/jul_2020/feature/02/index.html
*2 上に同じ
*3 上に同じ
*4 産経新聞「建設現場にもリモートの波 鹿島は3Dモデルで効率管理 様々な分野での活用に期待」
https://www.sankei.com/economy/news/200827/ecn2008270001-n1.html
*5 上に同じ
*6 日本生産性本部「コロナ危機に克つ:鹿島建設「スマート生産」を推進」
https://www.jpc-net.jp/research/column/detail/004660.html

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