アバターを利用したバーチャルオフィスで注目される「VirBELA」についてゆっくり解説
世界中に蔓延するコロナの影響で、今私たちのビジネスや生活には大きな変化が求められています。
日本では「新しい日常」や「ニューノーマル」という言葉で表現されていますが、いまだに具体的で効果的な形ははっきりとしていません。
そんな中注目されているのが、バーチャル空間でのリモートワークを実現するサービスです。
今回の記事ではアフターコロナの世界を予感させる「VirBELA」について、ゆっくり解説していきましょう。
この記事でわかること
・VirBELAが提供する仮想コワーキングサービスについて
・バーチャルオフィスのメリットとデメリット
・VirBELAを活用している企業について
VirBELAが提供する仮想コワーキングサービスとは
「VirBELA」が提供するのは、オンライン上でのコワーキングスペースが利用できるサービスです。
利用者はそれぞれカスタマイズ可能なアバターを使って、VerBELAが提供する空間を自由に動き回り、会議やカンファレンスに参加することができます。
わかりやすいイメージで言うと、「集まれどうぶつの森」やRBGゲームに参加するようなものです。
ただし、イベントが発生したり敵を倒したりするのではなく、日常のビジネスに必要なアクティビティができるというサービスです。
〇VirBELAの特徴 1
Zoomのようなオンラインミーティングツールではなく、バーチャルオフィスサービスである
新型コロナの影響により、通勤や社員同士の接触による感染拡大を防止する目的で、リモートワークを採用する企業が増えました。
最初はどちらかというと、一時的な利用として考えていた企業も多いようですが、いざ採用してみると意外に利点が多く、恒常的にリモートワークに切り替える企業も出始めています。
従業員にとっては、長時間通勤の負担がなくなり、企業にとっても物理的なオフィスが不要になるため、大きなコスト削減につながります。
この状態で通常の業務が回るのであれば、今までの勤務にこだわる必要はありませんよね。
リモートワークによりオンラインミーティングが普及し始め、多くのユーザが利用してる「Zoom」などのサービスがありますが、VirBELAはこれらとは基本的な設計思想が異なります。
例えば、Zoomを利用する場合はセッションに設定された時間に合わせて、参加者が順次ログインし会議をするという行動をとります。
VirBELAは「リモート会議用のサービス」ではなく、「オンライン上でのコワーキングスペース」です。
そのため会議の時間に関わらず、普通に会社に出社するように、アバターを使ってバーチャル空間に出社するところから始まります。
もちろん会議やカンファレンスなど、時間の決まったセッションへの参加もできますが、それ以外にもオフィス内にいる他の社員を訪問して一言二言会話を交わすといった、日常的に行われるアクティビティも可能です。
現在のリモートワークでは、仕事上のちょっとした確認事項があれば、メールか電話で担当者に聞いているのではないでしょうか?
Zoomをオンラインミーティングのツールとして導入していても、会議以外のコミュニケーションはメールや電話といった従来の手法に頼ることが普通だと思います。
VirBELAの場合、このような日常的なコミュニケーションについても、仮想空間の中で行うことが可能です。社員の多くは、仮想オフィスに「出勤」しており、それぞれの持つ「部屋」で仕事をしていますので、何かあればリアルと同様に担当者の部屋を訪問すればいいのです。
もちろん、仮想空間内の移動はクリックひとつで瞬時にできますから、リアルオフィスのようにエレベーターや階段を使う時間は必要ありません。
〇irBELAの特徴 2
マルチユーザーがアクセス可能なバーチャルでのコワーキングスペースを提供
マルチユーザープラットフォームですから、自分の会社以外の参加者にも普通にバーチャル空間で出会うことができます。
道を歩いている途中に出会ったアバターに話しかけるなど、参加者が限定されるオンラインミーティングツールとは全く異なる新鮮な体験が味わえます。
この辺りの感覚はオンラインゲームと同じですね。
ただしゲームと異なり、道ですれ違う人は敵だったり、勇者だったりはしませんが、、、。有名企業のCEOとかはいるかもしれません。
このように、多くの人がアバターを利用して常時オンライン接続することが可能ですから、大規模なカンファレンスや発表会、中には株主総会などを設定することもできます。
カンファレンスの参加者同士が自由に会話したり、交流を深めることもできるのが大きな特徴となっています。
VirBELAではリアルオフィスにかわる存在として、オンラインの活用をこれらのサービスで実現しようとしていますが、単に一企業のオフィスの代用にとどまらない可能性を秘めています。
バーチャルオフィスのメリットとデメリット
いろいろな可能性を秘めているバーチャルオフィスですが、導入のメリット・デメリットがあります。
どのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。
メリット1 物理的なオフィスを構えるコストが削減できる
もし仮にオフィスを一切構えなくて良いとしたら、そのコスト削減効果は大きなものになるでしょう。
もちろん、業種によっては難しい分野もあるとは思いますが、実際の業務の37%は完全にバーチャルに切り替えられるという調査もあるようです。
現実に、新型コロナの影響でとりあえずリモートワークに切り替えたところでも、意外に成果が出ることがわかり、本格的な導入を検討し始めている企業もあるではないでしょうか。
リモートワークを導入する際、ミーティングツールだけでなくバーチャルオフィスについても考えてみる価値はありそうです。*注1
メリット2 場所に影響されない業務や採用が可能
バーチャルオフィスは、オフィスの場所と社員の実際のログイン場所に、一切の関連はありません。
世界中どこにいても通常の業務ができることも大きなメリットです。
このことにより、採用についても社員の住居の場所を気にする必要がなくなります。
本来地方から採用した場合、転居に伴う費用や社員への負担は馬鹿にならないものがありますが、バーチャルオフィスによってこれらの面倒が一切なくなるのは非常に魅力的です。
海外から優秀なスタッフを採用することのハードルもなくなります。
私自身、両親の仕事の都合で「引っ越し族」だったため、小学校も何回か転校することになりました。
その度、かなりの手間暇をかけて荷物を整理し、慣れない土地に移り住んで新しい環境に馴染むまでそれなりの苦労を経験しています。
会社としても社宅を準備したり、引っ越し費用を負担したり、転勤に伴うさまざまなコストや事務手続きが必要でしょう。
バーチャルオフィスを導入することで、このような手間暇が一掃できるとしたら、会社にとっても社員にとっても大きなメリットになるはずです。
また、オンラインショッピングの普及や、各種インターネットサービスの浸透に代表される、グローバル化がテーマの企業にとっても重要な意味を持ちそうです。
海外事情に詳しい現地の社員を採用するにしても、バーチャルオフィスを利用すれば最小限のコストで大きな効果を得ることが期待できます。
また、実際に海外出張に行く社員がいたとしても、バーチャルオフィスを利用することで、現地にいながらでも日常業務が可能となります。
本人はヨーロッパにいるのに、アバターはいつも通りバーチャルオフィスに出勤して部下とミーティングを行なっている、という具合です。
メリット3 従業員にとって働きやすい環境の実現
このメリットについては、リモートワークを体験した多くの方が感じているところではないでしょうか。
自宅にいるため、リラックスしながら仕事ができること。
家族やペットと一緒の空間で過ごすことで安心できること。
ちょっとした空き時間を活用することで、料理・掃除・買い物など、プライベートと仕事をうまく融合して生活を充実させることができることなど、例を挙げるとキリがないぐらい多くのメリットがあります。
通勤にかけるコストや時間、精神的負担の解消なども含め、決められたオフィスに通うことがどれだけ社員にとって負担になっていたかが、リモートワークで認識されたのではないでしょうか。
春先の緊急事態宣言で急遽リモートワークになったものの、その後の解除に伴い再び通常の勤務に戻った時、「ああ、ずっとリモートなら良かったのに」と思った方も多いと思います。
特にリモートワークでも、ほとんどの業務に支障が出ないことがわかったような職務の方であればなおさらでしょう。
わざわざオフィスに通うことの必要性について、企業としてもこの機会に検証してみたら良いのではないでしょうか。
デメリット1 コミュニケーション問題
現在、Zoomなどのツールを利用したリモートワークで一番の問題となっているのは、コミュニケーションの不足による意思の疎通が難しくなっていることです。
リアル勤務で同じオフィス内にいれば、ちょっとした会話を含めてすぐに意思の疎通をはかることができます。
「あの件、どこまで進んでる?」
「あ、もうすぐ書類ができますので、すぐ先方に送ります。」
などといった簡単な会話はオフィス内で常に交わされています。
進捗状況の確認、情報の補完、社員のモチベーションの把握など、同じ空間にいるからこそできるコミュニケーションというものがあります。
しかし、Zoomなどを利用したオンラインミーティングだけとなると、このようなコミュニケーションが不足しがちになります。
メールや電話を使って「どうしてる?」なんていう、ちょっとした連絡はしにくいですよね。
SNSなどをコミュニケーションツールとして導入するところもあるようですが、業務と業務以外のプライベートに近いコミュニケーションとの明確な区別も難しく、効果的に使うにはそれなりに工夫が必要です。
この記事で取り上げたアバターを使ったVirBELAのサービスであっても、他のツールに比べて細かなコミュニケーションを取ることは可能ですが、やはりリアルほどではないようです。
デメリット2 社員の作業管理や状況把握の問題
目の前で仕事をしていれば、部下が居眠りしているのか、作業の手が止まっているのか、精力的に動いているのか一目でわかります。
それがオンラインだとわかりにくいのがデメリットとなります。
しかし、これについては作業の「状態」を見るのではなく、出てきた「成果」をきちんと測定することができればクリアになるのではと思っています。
日本では9時~17時の勤務時間中、誰がみても一生懸命・一心不乱に仕事に集中している「様子」が評価されることが多いようです。
しかしが、2~3時間ぼーっとしていても、きちんと成果を出す社員の方が評価されるという文化に変えたほうが良いかもしれません。
企業の管理部門は社員の「時間管理」や「作業管理」をするのではなく、「成果管理」をすることの方が、会社の業績にとっては有効なはずです。
このことができれば、リモートワークであっても十分な成果を出せる勤務状態が確保できるのではないでしょうか。
デメリット3 完全なリモートワークができない職務もある
これについては、職務の内容を切り分けて整理してみる必要があるでしょう。
その上で、完全リモート可能な部門から順次導入するなど、職務や役割によって区別すれば良いのでないかと思います。
中には、週1リアル出勤でリモート不可な作業をしながら、他の曜日は自宅勤務など、折り合いをつけながらの導入も検討できそうです。
VirBELAを活用して急速に伸びている注目企業
今回、リモートワークの進化系とも言える「VirBELA」について紹介してきました。
しかし、アバターを使ったオフィスワークって言うと、なんだかゲームの世界みたいで、現実味が感じられないという方もいるかもしれません。
実は、VirBELAのシステムを活用して急速に業績を拡大している実際の企業があります。*注2
その企業は「eXp Realty」という不動産仲介を事業とするベンチャー企業です。
創業から10年ほどで業績は急拡大し、2018年にナスダックに株式公開。
取引初日に時価総額10億ドルを突破しました。
この企業では、VirBELAのバーチャルオフィスを活用し、従業員だけでなく取引の建設業者や不動産エージェントとのコミュニケーションを行なっています。
「eXp Realty」は、企業の本社を登記するためなど必要最小限の目的のため、物理的なオフィスを持っていはいますが、それ以外の全てのオフィスは、VriBELAのバーチャル空間にあります。
同社はアメリカで、サブプライムローン問題を発端とする金融危機の直後に設立されました。
創業時点での資金の問題などから、実際のオフィスを構える形でなくオンラインのツールを活かしたリモート業務を積極的に導入し、その後バーチャルオフィスに完全に移行しています。
自社の業績と関係のない、金融危機のような社会変化の影響によるリスクを最小限にとどめることができるため、バーチャルオフィスの活用を選択しました。
経営層は仕事で世界中を飛び回りながら、バーチャルオフィス内でマネジメントをすることができるため、文字通り場所や時間の制約を受けないスピーディな経営判断ができます。
現在、12,000人いる従業員の4分の3がVirBELAを利用し、世界中で活動をしているとのことです。実際、これだけの従業員を通常のオフィス勤務で抱えるとしたら、かなりの額の固定費が必要となります。
バーチャルオフィスを導入することで、固定費として必要だったはずの資金を、成長戦略に振り向けることができたということが、急速な事業拡大にも繋がっているのでしょう。
ベンチャー企業にとって、自社のビジネスモデルを武器にできるだけスピーディに事業を拡大し、シェアを確保することが非常に重要です。
有力なライバルが出現してコスト競争に巻き込まれ失速するのを避けるため、スピードが何よりも優先されます。
そんなベンチャー企業にとって、調達した資金を無駄な固定費ではなく事業拡大のための投資に振り向けられるというのは、何にも変えがたいメリットと言えるでしょう。
もはや、「駅前一等地に自社ビルを建てること」は、旧時代のややメランコリックなモニュメントでしかないのかもしれません。
そんなことより資金を効率的に使い、世界中から優秀なスタッフを集め、誰よりも早くビジネスを拡大することが重要な時代となっているようです。
【まとめ】
オンライン会議システム自体は新型コロナ以前からいくつかあり、徐々に普及していました。
しかし企業活動の中では、どちらかというと「補助的なツール」というイメージがあり、保守的な企業ほどリアルでの会議やミーティングを重視する傾向が依然としてありました。
ところが新型コロナの影響もあり、否応無しに新しいビジネスのあり方が問われるようになっています。
これを機会に、オンラインミーテイングツールだけに止まらない、VirBELAのサービスなども一度検討してみてはいかがでしょうか。
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■参考文献
注1
TBSテレビ 「【SDGs×コロナ後の世界】分身が出勤 急成長“バーチャルオフィス”」
http://news.tbs.co.jp/newsi_sp/sdgs/archive/20200827.html
注2
Mogura VR 「「ほぼ完全なバーチャル勤務を実現」急成長の米不動産企業に迫る」
https://www.moguravr.com/exp-reality-vr-office/