CAEの役割とは?解析のメリットや活用方法をご紹介
ものづくりの現場は最先端のテクノロジーが集中する分野でもありますが、今多くのエンジニアが習得に力を入れているのがCAE解析のスキルです。
今回はCAEとは何か、そしてCAE解析がなぜ重要視されているのかについて、ご紹介していきます。
目次:
①CAEとは
②CAE解析の仕組み
③CAEの活用方法
④CAEが重要視される理由
CAEとは
CAEは(Computer Aided Engineering)の略称で、コンピューター上で設計製品を再現し、設計段階で問題がないかを検証するための技術です。
ものづくりの現場に欠かせない設計手法
製造業において、製品の設計段階では様々な検証を行わなければなりません。主に耐久性についての問題で、高負荷がかかる部分の強度は十分か、振動によって耐久性に問題が発生しないか、熱耐性はどうかなどの項目です。
従来ではこれらの問題を検証すべく、実際にテスト製品を作ってシミュレーションを行ってきましたが、CAEを使うことで、コンピューター上で検証を行うことが可能になりました。
実際に製品を出力する必要もなければ、そのためのスペースや時間もかからないということで、今日では盛んに利用されている技術です。
CAE解析の仕組み
CAEの技術を使ったシミュレーションはCAE解析と呼ばれ、検証内容に応じていくつもの種類に枝分かれしています。
これらの検証を支えているのが、CADソフトと解析ソフトです。
CADソフトは3Dモデルの作成においてはおなじみのツールですが、CAEの解析ソフトはプリプロセッサ・ソルバ・ポストプロセッサの3つから構成されています。
プリプロセッサでは、CADデータの読み込みや、検証を行う条件のデータ入力などを行い、解析用のデータ作成に取り組みます。
次のソルバでは、作成した解析用データを計算し、解析結果を算出してくれます。
ソルバは解析内容に応じて複数用意されており、ユーザーの目的に合わせた使い分けが必要になります。
そしてポストプロセッサはソルバで解析した内容をもとに、ディスプレイへ表示してくれる役割を果たします。
データをグラフ化したり、3Dアニメーションで表現したりなど、必要に応じて様々なアウトプットを行います。
CAEの活用方法
このように利便性の高いCAE解析ですが、その活用方法の汎用性の高さも魅力の一つです。
基本的な製品強度の予測
CAE解析は、上述の通り製品の強度をシミュレーションする際に利用されるのが一般的です。
例えばポピュラーなCAE解析の手法の一つに、応力解析と呼ばれるものがあります。
応力解析では、製品の一部分に想定される負荷をかけるシミュレーションを行うことで、どの程度の負荷がかかっているのかを、わかりやすく検証することができます。
実物で行う製品強度の計測は、壊れるか壊れないかといったシンプルな検証に終わってしまうこともありますが、応力解析を行うことで、どの程度の負荷がかかっているのかを数値化し、破損の可能性まで詳細に分析することが可能です。
特殊な環境下の検証にも活用
日常的なシミュレーションだけでなく、特殊な環境下の検証も容易に行うことができます。
数千度の熱を加えたときや、暴風雨の際の破損の可能性など、現実でのシミュレーションが難しい条件であっても、3Dモデルを使って簡単に行えます。
宇宙開発や深海調査など、次世代の研究開発を進めていく上では重要な役割を果たすでしょう。
また、シミュレーション結果をもとに、製品の寿命についても高い精度で逆算することができ、耐用年数の参考にすることも可能です。
CAE解析のメリット
CAE解析で行えるシミュレーションは、現実でも行うことのできる内容です。
しかしそれでもCAEを頼るのには、いくつものメリットが存在しているためです。
コスト削減
一つは、シミュレーションコストの削減です。
新しい製品のシミュレーションを実物で行う場合、製造や場所の確保、試験の実施の度に予算と時間を費やさねばならず、好き放題できるものではありませんでした。
しかしCAE解析ではコンピューター上でバーチャルに行えるため、新たにコスト負担が生まれる心配はありません。
また、高熱下での検証や暴風の中の検証など、特殊な機器を用いなければいけないシミュレーションなども容易に行えるようになり、製品開発を加速させられます。
正確なシミュレーション結果
CAE解析においては数値に基づく正確な計測が可能なため、精度の高いシミュレーション結果を算出できるのもポイントです。
実物のシミュレーションでは常に同じ条件下での検証を行うことが難しいケースもありますが、CAEでは確実なシミュレーションを実施できます。
不測の事態が発生することもないので、安心してシミュレーション結果の数値を信用できるのは嬉しいところです。
環境への配慮
シミュレーションを実物で行う場合、大量の廃棄物が発生してしまう点も課題です。
特に自動車事故の検証などは、自動車を丸ごと破損させてしまうために、大量のスクラップが発生しかねません。
一方CAE解析は実物モデルを使わずに行えるので、環境への負荷はゼロと言えます。
もちろん、コンピューターを稼働させるための電気は必要ですが、それ以外の排出物が生まれません。
廃棄物を最小限に抑え、エコな企業としてCSRに貢献することも実現します。
CAEが重要視される理由
このようなたくましい実用性に注目が集まる中、CAEはこれからの製造業において、改めて不可欠である理由も見られます。
トラブルの予防
一つは、トラブルを未然に防ぐための防止策として欠かせない点です。
昔から製品の不具合による顧客からのクレームはつきものでしたが、情報化が進んだ現代では、些細なトラブルでも大きな騒動に発展してしまうリスクがあります。
そのため、各メーカーは軽度の不具合であっても、その改善のために全力を注がなければならず、トラブル発生の度に設計変更が発生します*1。
設計段階からのやり直しが繰り返し行われるとなれば、担当部署には大きな負担がかかり、別プロジェクトの進行にも影響が出かねません。
そこで、CAE解析によってあらゆるシチュエーションにおけるシミュレーションを重ねて行うことで、トラブルの発生率を未然に低下させることができます。
トラブルの原因究明
また、万が一トラブルが発生した場合でも、CAE解析は役立ってくれます。
破損や不具合の原因究明をCAE解析によって迅速に行い、スピーディに設計変更を実践することで、低負担での再発防止を実現します。
また、クレームから施策の実施までのフローを高速化することで、顧客対応に真摯な企業として、ブランド認知の向上にもつなげられます。
おわりに
製品のシミュレーションをコンピューター上で完結するCAE解析は、業務効率化とコスト負担の削減、そして開発の促進を促す技術として、多くのメーカーが注目し、実践しています。
今後もCAE解析をとり入れる企業は増え、自然と人材ニーズも高まっていくでしょう。
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出典:
*1 MONOist「かつてCAEを軽く見ていた設計者がその必要性について説く (3/3)」
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1904/26/news007_3.html