CAD業界を牽引しているAutodesk社とAutoCADの歴史
この記事でわかること
・CAD業界を牽引しているAutodesk社の歴史
・CADの普及に大きく貢献したAutoCADの歴史
・Autodesk社とAutoCADの未来
CAD業界を牽引しているAutodesk社の歴史
CADといえば世界No1のシェアを誇っているのがAutodesk社です。ここではCADとAutodesk社の歴史について調べてみました。
CADの誕生
CADとは「computer-aided design」の略です。日本語では「コンピュータ支援設計」とも訳されますが、一般的にはCAD(キャド)という言葉で通じると思います。
日本ではJIS(日本産業規格) B3401に
「製品の形状、その他の属性データからなるモデルを、コンピュータの内部に作成し解析・処理することによって進める設計」
と記載されています。1 その歴史は1963年、アメリカのアイバン・サザランド博士が開発した「Sketchpad」が原型になっていると言われています。 これはCADプログラムの先駆けになったことはもちろん、グラフィカルユーザーインターフェースやオブジェクト指向プログラミングの原型としても有名です。2
この「Sketchpad」を元にして、アメリカ国防総省が航空機の設計用として「CADAM(キャダム)」というプログラムを開発しました。*3
民間では、1971年、ゼネラルモーターズ研究所でPatrick J.Hanratty博士が「ADAM(Automated Drafting and Machinery)」というCADソフトを開発しました。これが現在市販されているCADソフトの原型と言われています。*4
そして1977年、専用のハードウェアで動作する、世界初の3DCADシステム「CATIA」が発売されました。*4
Autodesk社設立とCADの普及
この頃までのコンピュータは、高価で専門知識が必要なものでしたが、1981年頃から発売されたIBM PCの登場により、デスクトップコンピュータが比較的手頃な価格で入手できるようになりました。
このIBM PCが広く普及することを見越して、1982年にJohn Walker氏がAutodesk社を設立し、1982年12月にPC向けCADソフトであるAutoCAD1.0をリリースしました。*4
AutoCADの登場に触発され、様々なメーカーがCADソフトを開発、販売してきました。
1985年にはAutoCAD 3Dが発売され、BIMの基礎となる設計ソリューションへの道が開かれます。
その後、Autodesk社はAutoCADにとどまらず、様々な製品群を発表しています。
その数は2021年1月現在で80種以上、Windows、Macなどプラットフォームを含めると100種以上のプロダクトになります。
また、製品の購入方法も変化しています。
従来は各製品を購入(正確には使用権を購入)すると、その製品をサポートや保守契約が切れるまで使うことが一般的でした。
しかし、近年はサブスクリプション方式という月払いや年払いでソフトウェアの使用権を購入する形に変わってきています。一番のメリットは使用権を購入している期間は最新バージョンが使用できることにあるでしょう。また、支払方法も選択できるので、ちょっと試してみたい場合は月払い、長く使用する場合は割安な年払いなど、ソフトウェアの利用形態に合わせて変えることが可能です。
CADの普及に大きく貢献したAutoCADの歴史
AutoCADはさきほどご紹介したとおり、1983年に初期バージョン(1.0)がリリースされました。
機械、土木、建築などの分野で使える汎用CADとして利用されています。
Autodesk社は他社との差別化を図るため、中間ファイルのDXFやAPI(Application Programming Interface)を公開しました。
これにより、サードパーティがAutoCADをベースにしたアプリケーションを次々と開発するようになりました。いわば、AutoCADがCADのオペレーティングシステムのような形になったわけです。
このビジネスモデルが成功し、Autodesk社は世界的に大きなシェアを獲得することができました。
AutoCAD自体は1982年に初期バージョンが発売されてから約40年、数年に一度、ここ最近は毎年バージョンアップされています。その都度機能追加が行われており、2021年1月現在のAutoCAD 2021ではクラウドを使った共同作業の機能がより強化されています。
また、AutoCADは古いバージョンで作成したファイルを読み書きすることが可能です。10年前に新築した住宅を改築するときなどでは、10年前に作ったファイルが必要になるでしょう。
過去のバージョンで作成したファイルの互換性を保っているのも、AutoCADが使われ続ける理由の一つだと考えます。
実際に、AutoCAD2021では、1990年に発売されたAutoCAD R11のファイルを読み書きすることが可能です。*5 *6
なお、古いバージョンのAutoCADをお使いの方もいらっしゃるかもしれませんが、Autodeskの方針で、旧バージョンの製品はアクティベーションができなくなります。
具体的には、AutoCAD2010以前のバージョンは2021年1月現在でアクティベーションできません。また、AutoCAD2011以前のバージョンは2021年3月にアクティベーションできなくなりますのでご注意ください。*7
Autodesk社とAutoCADの未来
常にCAD業界を引っ張ってきたAutodesk社とその基幹になっているAutoCADは今後もますます進化していくことでしょう。
近い将来、コンピュータが人間に変わって図面を自動設計する時代が来るかもしれません。
また、BIMのように大規模な建造物を設計から保守までを一貫して管理することも自動化されるかもしれません。
でも、そこには人間の想像力やイマジネーションが不可欠だと思います。
自動設計するためのパラメータや基盤となる考え方は人間が「入力する」ことに変わりはないと思います。CADはそのためのツールとして発展してもらいたいものです。
【まとめ】
今回はCADのなりたちやAutodesk社とAutoCADについての歴史について説明しました。
「Autodesk社とAutoCADの未来」でも書きましたが、コンピュータやインターネットの普及、そしてここ1年あまりで起こっている世界的な変革により、人々の働き方や考え方が大きく変わろうとしています。
情報や状況は日々変化し、常識すらも変わろうとしています。そういった変化についていくことが、我々エンジニアの使命なのではと考えています。
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参考URL
JISデータベース検索(利用には無料のユーザー登録が必要)1 https://www.jisc.go.jp/index.html
モードレスはどこから来たか – オブジェクト指向UIの起源 –2
https://modelessdesign.com/backdrop/335
CADとはどのようなもの?CADの基礎知識からCADを使った仕事まで徹底解説3 https://www.act.co.jp/column/category_cad/1808/
CAD イノベーションの歴史4
https://AutoCADresources.Autodesk.co.jp/home/cad-history
AutoCAD の図面形式のバージョン コード5 https://knowledge.autodesk.com/ja/support/autocad/learn-explore/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/JPN/drawing-version-codes-for-autocad.html
AutoCAD Release History6
https://Autodesk.blogs.com/between_the_lines/AutoCAD-release-history.html
前バージョンライフサイクルのお知らせ*7
https://knowledge.Autodesk.com/ja/support/AutoCAD/learn-explore/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/kA93g00000005CX.html