1. TOP
  2. ブログ
  3. かなり振り切った仕様で登場した「Amazon Halo」について

かなり振り切った仕様で登場した「Amazon Halo」について

 2019年に「人の感情を読み取るウェアラブルを開発している」と報道されていたAmazonの新しいサービスが、昨年「Amazon Halo」としてローンチされました。
 2021年になって、実際のユーザーレビューなども見られるようになり、その具体的な内容が明らかになってきています。今回の記事では、この「Amazon Halo」について、現時点でわかっていることをご紹介していきましょう。*注1

この記事でわかること
 ・Amazon Haloの概要と特徴について
 ・Amazon Haloの現時点での評価
 ・Amazon Haloの可能性について

Amazon Haloの概要と特徴

 Amazon Haloについて、事実を簡単にまとめると次のようになります。

◯関連する事実や報道

 2017年 Amazonがユーザーの感情を判断するために、音声パターンを分析する音声ソフトウェアの特許を出願

 2019年5月 Amazonが音声から装着している人の感情を分析するリストバンドタイプのウェアラブル端末を開発していることをBloombergが報道

 2020年8月 AmazonがHaloという新しいメンバーシップサービスを開始 *注2

 2017年に関連特許の出願がなされたということは、その数年前から開発に取り組んでいたと考えられます。2019年には具体的なデバイスの開発が明らかになり、2020年に新しいサービスとしてローンチしたという流れになります。
 では、具体的なサービスの内容はどのようなものでしょうか。

◯メンバーシッププログラムの概要

 まず料金とサービスの範囲ですが、現時点では特別プログラムに申し込んだ人にのみ提供される限定的なものです。
 当初6ヶ月は、64.99ドルでサービスと手首装着型のアクティビティトラッカー「Halo Band」がついてきます。その後は、月額3.99ドルのサブスクリプションでサービスを継続して利用することができます。

 Halo Bandは、液晶がなくマジックテープで手首につけるタイプのアクティビティトラッカーであり、歩数や活動時間、運動強度や心拍数、睡眠計測などをほぼ自動で行います。
 収集されたデータはAmazonのサーバに送られAIなどを利用して解析し、その結果が端末に送信されます。処理後の全データはサーバ上から削除され、送受信についても暗号化されているため、セキュリティについても安心とされています。*注3

◯Amazon Haloの特徴

 これだけ見ると、他のアクティビティトラッキングデバイスやサービスと比べて、あまり変わらないようにも思えます。
 それでは少し詳しく、Amazon Haloの特徴について見ていきましょう。Amazon Haloについて、特筆すべきなのは3つの大きな特徴についてでしょう。

(1)音声解析による感情の判断とサジェッション機能「Tone」

 先行する報道で、「人間の感情を分析する」とされていたのがこの部分です。Halo Bandにはマイクが装備されており、普段の何気ない会話をサンプリングすることで、声の大きさ・口調・テンポなどを解析してユーザーの感情を判断することができます。

 自分の声が他人に対してどのように聞こえているかをユーザーが知ることによって、円滑なコミュニケーションに役立てることができるとされています。他者との会話に限らず、例えば重要なプレゼンの前に自分の声が緊張で上ずってないかなどをチェックすると言った活用が考えらます。
 「人間の感情を判定する」とされていたサービスの正体が「Tone」ということになります。

 なおユーザーを区別するために、最初いくつかの文章を読み上げて認識させる必要がありますが、全て英文です。現時点では英語以外の言語に対しては、Toneは機能しないようです。
 また、サービス自体も米国内限定となっています。もちろん、VPNで米国内からアクセスした上でアカウントを取得しオーダーすれば、日本にいてもサービスを利用することは可能です。

(2)体脂肪を測定し人体モデルを3Dでビジュアル表示する機能

 事前報道で噂されていた「Tone」よりも、個人的にはこちらの機能の方がユニークで面白そうだなと感じています。
 体脂肪率の測定については、最近の体重計には結構付属しているため、身近な指標の一つになっています。しかし、実は正確に測定するのは難しく、きちんと測定しようとした場合水中に全身をつける必要があるなど、かなり大規模な装置や方法が必要です。

 現在、一般的に使われている体重計での測定については、「生体インピーダンス法」と呼ばれるものが利用されており、残念ながら正確性については多少のずれがあります。
 「生体インピーダンス法」は、体内に微弱電流を流すことで脂肪の割合を推定していますが、体内の水分量で結果が変わるという欠点があります。しかし、継続的に同じ条件で測定することで、体脂肪の変化についてはある程度フォローできるため、とりあえずの目標設定のための指標としては使用することができます*注4

 その点Haloでは、ユーザーの全身画像から体脂肪率を推定するという、今までにないユニークなアプローチを採用しています。サービス名称は「Body」です。
 「Body」は、スマホのカメラで下着姿の写真を撮ると、Amazonのニューラルネットワークがユーザーの3D全身モデルを作成し、このモデルから体脂肪率を推定します。
 物理的に人体から測定するのではなく、画像解析を用いるというのはなかなか面白くユニークです。語弊はあるかもしれませんが、「見た目で判断」した体脂肪測定になります。
 しかも、その判断しているのが世界最先端レベルのAmazonのAIというのですから、信頼性については「人の目」よりははるかに上でしょう。Amazonによると、「医師が使う方法と同程度、家庭用体重計の2倍近く正確」な精度を実現していると紹介しています。さすがAmazonのAIです。
 
 さらにこの3Dモデルを使って、「体脂肪率を◯◯%に落とした時の体型」などをシミュレーションすることができます。痩せた時の体型をビジュアル化して見ることができるのであれば、単に数値だけを追いかけるよりもはるかにモチベーションに繋がりやすいと思うのは私だけでしょうか?この機能だけ、Haloとは別枠で提供して欲しいくらいです。

(3)サードパーティが提供するワークアウト動画「labs」

 Amazon Haloを契約すると、多彩なサードパーティが提供するワークアウト動画を視聴することができるようになります。こちらのコンテンツは今後も増加するでしょうし、単なるデバイスだけでなくソフトウエアとコンテンツが同時に提供されるのは、ユーザーにとって便利であることは間違い無いでしょう。

 Halo Bandのようなアクティビティトラッキングデバイスを購入する人の多くは、ワークアウトなどの運動量を測定することも目的の一つでしょう。
 ハードウエアとアプリ機能だけでなく、具体的な運動プログラムまで提供されれば、他の有料サービスを契約するコストも手間も削減することができます。Amazon Haloを契約するだけで良いという利便性は、ユーザーの囲い込みや他サービスへの流出を防ぐ大きなポイントになるでしょう。

実際のレビューでわかる現時点での評価

 サービスの提供から半年以上が経過していますので、いくつかのユーザーレビューがネット上で見られるようになりました。
 Amazon Haloは「感情を分析する」という画期的な機能に加えて、液晶なしという攻めたデザインなど、他の同様なプロダクト・サービスに比べてさまざまな特徴があります。
 そのためユーザーの評価についても、プラス・マイナスの両方があるようです。

 Caitlin McGarryは数週間の使用を踏まえて、このデバイス(とサービス)は「誰のためにもならない」と結論づけています。以下は彼女のレビューで紹介されている内容です。

 (1)Halo Bandは画面なしというシンプルなデザインですが、結局スマホがなければ何も確認できないという仕様です。なんのための画面なしなのかと疑問に感じます。

 (2)アクティビティトラッキングの仕組みにも賛成できません。運動量をポイント換算し、1週間で150ポイントの消化を目指すとなっていますが、どんな運動をすれば何ポイント消化できるのかがよくわかりません。また、運動をせず机に座っている時間などはポイント減算される仕組みもモチベーションを低下させます。FitbitやApple Watchの方が運動に対する意欲を持続させます。

 (3)Tone機能は全く必要性を感じません。例えばスマホで「感情に起伏があった」と確認できても、その時の実際の会話が録音されている訳では無いので、具体的にどんな場面でどんな口調で話しをしたかわかりません。役に立たない機能に思えます。そもそも、常時人との会話を録音するという仕様は、私と会話する相手にとって警戒心を与える可能性すらあります。

 (4)人体の3Dモデルについて、実際の体型と異なる誇張したビジュアルに思えます。体型に自信のない人が、3Dモデル化された自分の体を見て喜ぶのでしょうか。また、体型測定に毎回下着姿になり、たとえデータが削除されるとしてもその画像が送信されることは積極的に肯定できません。

 結果、同じ金額を出すのであれば、もっと優れたアクティビティトラッキングデバイスと関連サービスを手に入れることができるはずだと結論しています。

 上記のレビューを見る限り、Caitlin McGarryにとっては全くニーズに沿わないものだったようです。* 注5

 AmazonのHalo Bandサイトを見ると、ユーザーの評価は星3.5ぐらいです。良くも悪くもないといったところです。5つ星が全体の45%と半数以下であり、さらに1つ星は14%とかなりの数いるようです。
 5つ星評価を出している人のレビューを読むと、Caitlin McGarryが不満を持っていたToneやBodyについて「ユニークで面白い」と楽しんでいる人が多いようです。このような新しい機能に対して、ユーザ自身が受け入れられるかどうかで評価に差が出るようです。

 他にも睡眠のトラッキング機能については、FitbitやApple Watchよりも正確だと言うものや、画面がないので余計な表示で気を散らさずに済むと言った内容が高評価の理由になっています。
 このようなレビューを眺めてみると、万人受けするというよりはユーザを選ぶサービスとデバイスになっているのかもしれないと感じました。*注6

この先の可能性について

 Amazon Haloは、ToneやBodyなどのユニークな機能を持ったAmazon最初のプロダクトであり、サービスです。
 今後、ユーザーからの多くのデータを蓄積し分析することによって、さらに利便性の高い情報を提供できる可能性を秘めています。
 難しい設定をしなくても、ほぼ自動で各種身体データやアクティビティの状況を収集し、AIで分析することで有用な情報を提供するというシステムは、非常に魅力的です。

 デバイスに画面をつけず、シンプルにしたのも思い切った判断ですが、それを好意的に受け取るユーザも一定数いるでしょう。
 しかしユーザーによっては、ToneやBodyなどの独自のサービスが単なる「ガジェット」にしか感じられず、むしろ余計なものと感じているようです。せっかくのユニークな機能ですので、今後もっとブラッシュアップすることで、Caitlin McGarryなどのユーザーにも受け入られるようなものに進化すると裾野は広がるのではないでしょうか。

 Amazon Haloは、2021年にAlexaと連携し音声での操作が可能になりました。Amazonのエコシステムの中で、ユーザーにとっての利便性が増してくるのは間違いないでしょう。
 記事執筆時点において、AmazonのWebサイトでは「在庫なし」となっているようです。スタートとしてはまずまずの成功を納めたのではないでしょうか。
 ここで記載したように、現時点での評価は分かれているようですが、今後の進化を含めて将来有望なサービスの一つと言ってよいでしょう。

【まとめ】
 Apple Watchの登場でマーケットが生み出され、大きく発展してきたアクティビティトラッキング分野ですが、いよいよAmazonも積極的に進出してきました。
 世界最先端・最高水準のAWSを運営しているAmazonだけあって、AIを使ったユニークなアプローチが今回ご紹介したHaloには見て取れます。記事執筆時点(2021年4月)では、まだ米国内限定のサービスではありますが、いずれは提供エリアを拡大することで、日本でも試せるようになることを期待したいところです。

 

 

▼キャパの公式Twitter・FacebookではITに関する情報を随時更新しています!

■参考文献
注1
IT Media News 「Amazon、人の感情を読み取るウェアラブル開発中──Bloomberg報道」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1905/24/news065.html
注2
Tech Crunch 「アマゾンが手首装着型アクティビティトラッカー「Halo Band」とメンバーシッププログラムを発表」
https://jp.techcrunch.com/2020/08/28/2020-08-27-amazon-debuts-halo-smart-health-subscription-service-and-halo-band-wearable-activity-tracker/
注3
engadget 「米Amazon、フィットネストラッカーAmazon Halo発表。体脂肪率測定や声で感情を分析も」
https://japanese.engadget.com/amazon-halo-080002937.html
Amazon Amazon Halo
https://www.amazon.com/Amazon-Halo-Fitness-And-Health-Band/dp/B07QK955LS?th=1
注4
厚生労働省 「体脂肪計」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-091.html
注5
Gizmodo 「Amazon Haloレビュー:スマートバンドで自己肯定感が下がるのは良くない」
https://www.gizmodo.jp/2021/01/amazon-halo-review.html
注6
Amazon Halo Band
https://www.amazon.com/Amazon-Halo-Fitness-And-Health-Band/product-reviews/B07QK955LS/ref=cm_cr_arp_d_viewopt_sr?ie=UTF8&reviewerType=all_reviews&filterByStar=five_star&pageNumber=1

    カテゴリ一覧

    PAGE TOP