なぜプロジェクトは遅れるのか?
なぜプロジェクトは遅れるのか?について、正確な答えを与えることは難しい。恐らくその要因だけでも数え上げれば数十、数百に登るだろう。
だが、それに対してシンプルな答え、本質的な答えを与えよう、という人物が居た。名前はエリヤフ・ゴールドラットという。彼はイスラエルの物理学者であり、「ザ・ゴール」という書籍で「制約条件の理論」を発表したことにより脚光を浴びた作家でもある。
ザ・ゴールで発表された「制約条件の理論」は、物語中では製造業に適用されているものだったが、彼は制約条件の理論は製造業だけに適用されるものではなく、ソフトウェア開発にも適用できる、と主張し、その理論をソフトウェア開発プロジェクトに応用した「クリティカルチェーン」という物語を書き上げた。
ではこの「制約条件の理論」とはどのようなものなのだろうか。
シンプルに言えば、「何かの問題が起きた時、その問題に対して枝葉の対策を取るのではなく、もっとも重要な一点を解決することにより全体の問題を解決する」というアプローチである。
たとえば「ザ・ゴール」にて製造業の例が示されたが、「在庫削減」と「生産量のアップ」を同時に果たすにはラインの中で最も重要な部分、すなわち「一番処理能力の低い加工機械」を見つけて、その機械の能力を強化することで、全体のスループットを上げれば良い、という事例を示した。
クリティカルチェーンでは、その理論が応用され、プロジェクトが遅れるのは、枝葉の問題に対処しているからだ、という指摘がなされる。個別のチームが、個別の課題に対処するだけでは、問題は解決しないというのだ。
では、彼はどのようにしてプロジェクトの遅れを回避させようとしたのか。かれは、問いを立てる。プロジェクトのスケジュールにおいて最も重要なところはどこか?という問いだ。
彼はそれに対して、それは、「クリティカルパスである」と答える。クリティカルパスの遅れは即プロジェクトの遅れだからだ。したがって彼は「プロジェクトマネジャー」が最も気を使うべきはクリティカルパスであり、クリティカルパスを遅れから保護するためにあらゆる施策を用いる、と結論づけている。
具体的には、以下の2点が対策の核心である。
1.クリティカルパスのバッファーは各作業で持つのではなく、全体として共有すること
2.クリティカルパスに合流する仕事がクリティカルパスに影響を与えないよう、合流バッファを設けること
詳しくは書籍を参考にしていただきたいが、プロジェクトマネジャーならば誰でも一回は目を通しておいても損はない名著である。