インフォマティクスがMRでもたらした新しいCIMデータ活用とは
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)とともに、現在注目を集めている視覚技術のひとつが、MR(複合現実)です。エンターテイメントでの活躍もさることながら、MRは医療や流通、そして建設土木業に至るまで、あらゆる業界において活用の機会が見出されている技術です。
今回は、インフォマティクスが開発しているMRとCIMデータを組み合わせた新しい活用方法から、建設業におけるハイテクの可能性について考えていきます。
目次:
①複合現実(MR)とは
②インフォマティクスのMR技術について
③インフォマティクスが目指す新しいCIMデータ活用の可能性
複合現実(MR)とは
複合現実は英語で表すとMixed Realityと表現しますが、その機能は名前の通り、ARとVRを混ぜ合わせたような活躍が期待できます。ARは現実の世界に仮想的なオブジェクトを表示し、現実世界との融合を促す技術です。一方でVRは、ユーザーを完全な仮想空間に導き、まるでその世界に放り込まれたかのような体験を提供します。
MRは、そんな両者の特性をうまく組み合わせて生まれた技術です。基本的に、MRは現実世界をベースにした景色を提供し、そこに3Dのオブジェクトなどを表示するため、ARに近い技術と思われるかもしれません。しかし、MRはARとは違い、それらのオブジェクトを立体的に捉え、様々な角度から触れたり、眺めたりすることができます。まるで仮想空間にいるように活動できるという意味では、VRに近い使い勝手を覚えるでしょう。
ARよりも利便性が高く、VRよりも実世界との繋がりの太いMRは、その実用性の高さから、ビジネスの側面での注目度が非常に高い技術です。
インフォマティクスのMR技術について
このような注目度の高いMR技術を実践的に導入しているのが、インフォマティクスの「GyroEye Holo(ジャイロアイ ホロ)」です。従来の建設業務の多くをMRによって統合し、大幅な業務効率化を促すテクノロジーの開発に取り組んでいます。
GyroEye Holo(ジャイロアイ ホロ)とは
GyroEye Holoは、1分の1スケールの図面をMRによって目の前に投影する機能を主とするシステムです。これまで、図面は2次元のデータを紙やPCなどで確認しながら、実際の施工現場と付き合わせることで正確な施工を行ってきました。しかし何度も現場と図面を見比べる作業というのは手間がかかるだけでなく、ケアレスミスなどのヒューマンエラーの要因ともなってしまうため、現場における大きな負担となってきたのです。
そこでインフォマティクスのGyroEye Holoは、図面を直接目の前に投影することで、施工現場に具体的な建設物の設計図を直接実寸で表示できるように開発されました。これによって直感的な理解を促すだけでなく、何度も図面を見る必要もなければ、ケアレスミスの心配も大幅に減少します。
また、GyroEye Holoを使ったMR処理においては、BIM/CIMデータを活用します。情報量が多く、正確性に優れたBIM/CIMデータを使うことによって、ミスのないMR活用を実現しています。
実際の活用シーン
GyroEye Holoの活用シーンについては、非常に多くのシチュエーションが想定されています*1。例えば墨出し・ケガキにおいては建築設備(インサート)の位置出しや、建設現場におけるケガキ作業に活躍します。また、出来高確認においては図面や3Dモデルを重畳させ、施工が正確に行われているかどうかを検証するのに役立ちます。
GyroEye Holoは、現場作業員と遠隔の作業員がコミュニケーションを行なったり、リモートで作業を行ったりするのにも活躍する技術です。映像を遠隔から見ながら、配筋等の施工作業、職人への指示に活用することもできますし、遠隔地から図面や3Dモデルを重畳させて確認することも可能です。
現場に作業員を送らなくとも、遠隔で複数の現場で業務を遂行できるようにもなるので、少ない人材を効果的に配置することも実現するでしょう。
業務効率化だけでなく、人材不足の解消も求められている建設業において、非常に有意義な効果を発揮しています。
インフォマティクスが目指す新しいCIMデータ活用の可能性
このように、実用的なMRの可能性について実践を進めているインフォマティクスですが、今回はそんなMRとCIMの活用方法について、新しいアプローチにもチャレンジを行なっています。
準天頂衛星システム「みちびき」とMRの連携
今回インフォマティクスが取り組んでいるのは、準天頂衛星システム「みちびき」とMRを連携し、新たにCIMデータを活用する方法を探るという取り組みです。「みちびき」は日本が有している衛星測位システムのことで、衛星からの電波によって位置情報を計算します。衛星を使った測位システムについてはアメリカのGPSが最も有名ですが、「みちびき」も同カテゴリの衛星であるため、「日本版GPS」と呼ばれることもあります*2。
既存のGPS衛星と「みちびき」の衛星システムを組み合わせることで、非常に精度の高い位置情報の提供が可能なこのシステムですが、現在インフォマティクスは「みちびき」とMR、そしてCIMデータを組み合わせた実証実験を行なっています*3。
今回の実験の結果、「みちびき」の高精度な位置情報により、実寸大CIMデータの正確な重畳が実現し、みちびきの補強信号がMR映像を常時補正することに成功しています。特定のエリアのみならず、「みちびき」を使うことであらゆる場所においてCIMデータを反映し、CIMデータの位置合わせが可能になるため、あらゆる現場での作業効率化が望める結果です。
今後の可能性について
今回のシステムが優れているもう一つの点として、このシステムの利用にあたっては受信機とMRデバイスのみしか必要としない点が挙げられます。多くの人員や機材を持ち込むことが難しい山間部や、拠点から離れた僻地においても効率的な業務の遂行が見込めるでしょう。
新卒の人材不足や、熟練の技術者の引退が進む中、優れたパフォーマンスを最低限の人数で遂行できるよう、今後も製品化に向けた取り組みが行われる見込みです。
おわりに
MRの活用現場は、MR技術の発展はもちろん、新しい衛星システムの登場など、様々なハイテクと結びつきながら徐々に変化を遂げています。
今後もMRはAIやIoT、そしてCIMデータ活用の普及とともに、その活躍の機会を増やしていくことになるはずです。
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参考:
*1 インフォマティクス
https://www.informatix.co.jp/gyroeyeholo/
*2 内閣府「みちびきとは」
https://qzss.go.jp/overview/services/sv01_what.html
*3 インフォマティクス「【ニュースリリース】株式会社インフォマティクスが、準天頂衛星システムみちびきとMixed Reality技術の連携によるCIMデータの活用を実証」
https://www.informatix.co.jp/pr_gyroeye-holo21/