派遣技術者として働くメリット・デメリット
「ハケン」と聞くと、どうしても非正規雇用ならではの悪いイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし実際のところ、派遣技術者として働くことはデメリットばかりではありません。
今回は、筆者が派遣で大手メーカに就業し、そこから正規雇用の開発職に転職した経験から、派遣技術者として働くメリットとデメリットを紹介します。
■派遣技術者のメリット
もともと派遣というのは、特殊技能を持つ専門家集団が腕一本で世の中を渡り歩く仕組みです。その働き方ならではのメリットが以下です。
–スキルのガラパゴス化を防げる
企業には、多かれ少なかれその会社ならではのカラーがあります。
1社にずっと勤め続けていると、自分の持っている技術がその企業の中でしか通じないものか、社外でも通用するものか分からなくなってきます。転職に恐怖心を持つこともあるでしょう。
複数の企業に派遣として出入りすると、共通して社会から求められる技術者像を掴みやすくなります。技術者としての柔軟性を保つことができるでしょう。
–技術的な事以外に煩わされにくい
正規雇用の従業員になるということは、エンジニアとして以外の仕事が増えることを意味します。
派遣であれば、現場の指揮命令者に任せきりにできる雑務や管理業務はもちろん、無駄な作業にしか思えない業務に割かれる時間も増えます。
人間関係や社内政治に煩わされたくない人であれば、派遣技術者の距離感はとても居心地がよく、働きやすいでしょう。
–人気企業や特殊分野の業界で働く機会がある
有名な大手企業や特殊な業界での就業を希望するときにどうしても発生するのは、学歴や年齢・性別による「ふるい分け」です。場合によっては希望する仕事に就けないこともあるでしょう。
しかし、それらの企業が抱える派遣技術者の中に入れば、勤務経験を得ることができます。
–収入が高い
誤解されがちですが、技術者は派遣のほうが高収入になるケースが多いのも特徴です。
就業先にとって派遣技術者は「いつでも切れる、教育コストをかける必要がない、即戦力の」人員です。給与体系が異なるため、仕組み上手取りの給料は派遣のほうが高くなりやすいのです。
また、派遣元の体制によっては、派遣先よりも充実した福利厚生を受けることもできます。
派遣から正社員に転職して「給料が下がった・待遇が悪くなった」というのは、実際のところよく聞く話です。
■派遣技術者のデメリット
一般的に言われやすい、「リソースのバッファ扱いのため雇用が安定しない、いつでも切られる可能性がある」以外のデメリットが以下になります。
–成長の機会と方向性が限られる
企業にとって派遣技術者を抱える大きなメリットは、「派遣社員の研修や教育にコストをかける必要がない」という点にあります。
派遣技術者は基本的に「即戦力」を求められます。業務はOJTで覚えることになるでしょう。
よって、未経験の上流工程に挑戦する機会や、工程管理などマネジメント的な業務、お金が絡む、経営に関連する業務に関わる機会には、正社員ほど恵まれてはいません。
–派遣でもスキルのガラパゴス化は起きる
派遣のメリットの一つに「スキルのガラパゴス化を防げる」がありますが、同じ派遣先で長期間就業すると、さすがに防ぎ切ることが難しくなってきます。
10年単位で同じ派遣先に常駐し、その場所でしか評価されない、他の派遣先に行っても通用しない人材になると、身動きのとりづらさは正社員とほとんど変わらなくなってきます。
そうなると、派遣ならではの柔軟性が損なわれ、デメリットが目立ちやすくなるでしょう。
–帰属意識が生まれにくい
あまり意識されないデメリットですが、組織に対して帰属意識を持ちにくいのも特徴です。
帰属意識とは、「自分がその組織の一員であること」、家族や仲間であるといった、集団に対する愛着です。
組織に愛着を持てていれば、仕事がうまくいかないときや不本意な仕事をするときも、「この場所のため」という思いで乗り切ることができます。
しかし、愛着のない組織のために辛い仕事をこなすのは、精神的な負担が大きいものです。
■派遣と正社員、どちらが良いか?
実際のところ、技術者として働くうえで派遣と正社員のどちらが優れているかは「人による」と言えます。
「色々な場所で働きたい」「手に職を持って、腕一本で生きていきたい」と考える職人志向の人は、派遣のほうが向いているでしょう。
「1社に骨を埋めたい」「仲間と一緒に組織を育てていきたい」「いずれ経営などにも関わりたい」と考える人には、正社員としての働き方が向いているでしょう。