折り畳みはスマホ界の主となるか?〜Galaxy Foldの挑戦〜
かつては手のひらサイズの端末が当たり前だったスマートフォンも、近年はディスプレイが大型化し、片手に収まらないというケースも増えてきました。
そんな中、注目されているのが折り畳み構造のスマートフォン。
大きなディスプレイを維持しつつ、コンパクトさを両立するための技術が、今多くのスマートフォンメーカーで形になりつつあるのです。
今回は、そんな折り畳みスマートフォンの代表的機種であるSamsungのGalaxy Foldについてご紹介したいと思います。
■この記事では次の事がわかります
・なぜ今、折り畳みスマートフォンが話題なのか?
・触って分かったGalaxy Foldの良いところ
・Galaxy Foldに感じた課題
再発明された電話がスマートでなくなった時
「今日、Appleは電話を再発明する」
故スティーブ・ジョブズの有名な言葉と共に登場したiPhoneは、携帯電話として初めて本格的なマルチタッチディスプレイを搭載し、殆どの操作をディスプレイへのタッチで行うという画期的なデバイスでした。
物理キーボードが不要になったことでディスプレイの大型化も可能となり、以降iPhoneのような大画面+マルチタッチというスタイルがスマートフォンの主流となったのは、皆さんもご存じの通りです。
しかし、最初は手のひらに収まるサイズだったスマートフォンも、競争と進歩の中で次第にディスプレイサイズが大型化していきます。
「より多くの情報を表示できるように」或いは「より迫力のある映像を楽しみ得るように」など製品により理由は様々ですが、スマートフォンのディスプレイは毎年のように大きくなり、いつしか片手で持てないようなサイズになってしまいました。
大型化と持ち運び易さを両立する
画面が大きくなれば出来る事も増えますし、文書作成や動画編集では作業効率がアップすることは確かです。
しかし、スマートフォンはあくまで携帯電話。あまり大きくし過ぎると、電話としては使いづらくなる上、携帯性も下がってしまいます。
コンピューターとしての機能を求めるとサイズが大きくなり、携帯電話としての機能を求めるとサイズを小さくせざるを得ない。
この相反する部分を両方一気に解決する手法として編み出されたのが、Galaxy Foldのような折り畳みスマートフォンなのです。
なぜ折り畳みスマートフォンが話題になるのか?
ここで読者の皆さんの中には、こんなことを思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「折り畳みなんて、ガラケーなら当たり前の技術でしょ?」
確かに、それはその通り。端末を折り畳んで小型化するという考え方自体は、実は別段珍しいことではありません。
それどころか、折り畳みスマートフォン自体もGalaxy Foldが初という訳ではないのです。*1
では何故、この機種がこれだけ注目されるされるのでしょうか?
理由は意外なところにありました。
1枚のディスプレイを折り畳むウルトラC
従来の折り畳みスマートフォンでは、ヒンジを跨いでディスプレイを配置することが出来なかった為、折り畳み機構を境に、それぞれ独立したディスプレイを搭載する必要がありました。
ゲーム機でいうところの、Nintendo DSのような形になっていたわけですね。
しかし、このやり方では写真や映像を2つのディスプレイに跨がって表示する際、ヒンジ部分で強制的に分割されてしまうので、見栄えの面ではあまり良いとは言えません。
Galaxy Foldでは、この問題を解決する為、1枚の大型ディスプレイを折り畳むという方法を採用しました。
ここ数年、スマートフォンで採用が増えているOLED(有機ELディスプレイ)は自由に折り曲げることが出来るという特徴があり、これを折り畳み機構に応用したという訳ですね。
どうして今Galaxy Foldが注目されているのか、おわかり頂けたでしょうか?
実際に触って分かったGalaxy Foldの実力
筆者は先日、幸運にもGalaxy Foldの実機を触る機会がありました。
ここではその時気付いた事を踏まえ、Galaxy Foldのもつポテンシャルについて触れていきましょう。
現行フラグシップ機と同等の基本性能
Galaxy Foldの基本スペックは、同世代のAndroidフラグシップ機と概ね同じです。
SoCはQualcommのSnapdragon855を採用。RAMはノートPC顔負けの12GBを搭載し、事務作業程度ならPCとほぼ変わらない性能を誇ります。
Galaxy Foldは他のAndroidスマートフォンと同じく外付けキーボード等に対応しているので、外回り仕事の事務作業マシンとしても十分活用可能です。
しっかり強度が確保された折り畳み機構
折り畳み式はヒンジ部分の強度も大事なポイントです。
筆者も実際に何度か開いて閉じてを繰り返してみましたが、その度にカチリと音がしてしっかり固定される感覚があり、強度的な不安感は殆ど感じませんでした。
もちろん、乱暴に扱えば壊れることもあるでしょうが、これはGalaxy Foldに限らず、全ての折り畳み機に言えることです。
ノッチが気にならない
Galaxy Foldではメインディスプレイ(折り畳めるディスプレイ)にインカメラや各種センサー類を搭載するノッチが付いていますが、通常のスマートフォンのように出っ張りが気になるということはありませんでした。
これは、本体を開くとノッチが画面右上に来るように設計されている為、他の機種よりも視界に入りにくい事が理由と思われます。
樹脂製のディスプレイ表面も快適な触り心地
折り畳みのディスプレイを採用する関係で、Galaxy Foldのメインディスプレイは表面がガラスではなく樹脂素材になっています。
しかし、昔のスマートフォンのようなチープさはなく、触り心地もすこぶる快適です。
また、ガラスに比べると柔らかい為、触った際に衝撃が吸収されるような感覚があり、これも触り心地の良さに繋がっているものと思われます。
折り畳み時のサブディスプレイが思いのほか使える
この機種はメインディスプレイを内側に折り畳む構造の為、閉じている時も各種操作ができるよう、本体背面にサブディスプレイが搭載されています。
サブと銘打っていますが、あくまで折り畳みのメインディスプレイに対するサブであり、実はこちらだけでも殆どの操作が可能です。
もちろん、アプリの使用も出来るので、ガラケーのように作業の度に本体を開く必要はありません。
2つのディスプレイ間のアプリ引き継ぎが快適
Galaxy Foldの2つのディスプレイは排他制御なので、開けばメインディスプレイのみ、閉じればサブディスプレイのみが動くようになっています。
では、アプリの使用中にディスプレイを切り替えた場合はどうなるのでしょうか?
この場合、基本的にはアクティブな状態のアプリがそのまま切り替え先のディスプレイに引き継がれます(ただし、アプリによっては切り替え非対応だったり、動作が一時停止するケースもあるようです。)
また、設定でアプリの引き継ぎをカスタマイズすることも出来るので、ユーザー自身の使い方に合わせて調整することも可能です。
緻密に計算された重量バランス
大型ディスプレイを搭載したGalaxy Foldでは、本体の重量も一般的なスマートフォンより重くなる傾向にあります。
しかし、実際にディスプレイを開いた状態で持ってみると予想に反してかなり軽く感じ、まるで薄い文庫本や新書を持っているようでした。
正直、普段使っているiPhone11の方が重たく感じたくらいです。
実際にはGalaxy Foldの方がiPhone11より90gほど重い事を考えると、Samsungの開発陣はかなり重量バランスに気を遣っていたことがわかりますね。*2
要改善ポイントも〜まだまだ発展途上のGalaxy Fold〜
このように、予想に反して非常に出来の良いスマートフォンとなったGalaxy Foldですが、もちろん改善すべき点もあります。
ここからは、その点についてご紹介しましょう。
FeliCa非対応
Galaxy Foldは同社の他のフラグシップ機と異なり、FeliCaには対応していません。
その為、普段モバイルSuicaやiD/QuickPay等を使われている方は、別途物理カードや決済用端末を用意する必要があります。
高価な端末価格
Galaxy Foldは高いスペックに加え、これまで使われていなかった新たな機構等が搭載されていることから、一般的なスマートフォンと比べ価格がかなり高くなっています。
この記事を書いている2019年11月時点では、国内版(au)が一括価格で24.5万円3、海外版を輸入した場合は30万円超え4と、ハイスペックPC並みのお値段。
さすがにスマートフォンとしてはまだ高価だと言わざるを得ません。
良い製品ではあることは確かですが、爆発的にユーザーを増やすためには、最低でもあと10万円程度端末価格を下げる必要があるのではないでしょうか?
折り畳むと重さがズシリとくる
先に触れたようにGalaxy Foldは重量バランスがしっかり計算されており、メインディスプレイを開いて持っても見た目や数値ほどの重さは感じません。
しかし、これはあくまで開いた状態で使う時の話であって、折り畳んで持った時には真逆の結果になります。
画面を開いた状態で使う事がメインである以上これはやむを得ないのですが、少しがっかりしたというのが正直なところです。
まとめ
今回は「折り畳みは業界の主流となるか?〜Galaxy Foldの挑戦〜」と題して、auから発売された話題の折り畳みスマートフォンGalaxy Foldについてご紹介しました。
折り畳みスマートフォンの技術はまだまだ発展途上ですが、SoCの性能向上が著しい昨今の情勢を鑑みれば、一定の市民権を得ることもそう遠くない未来にあり得ると思います。
ガラケーのように折り畳み機がストレート型を駆逐するのか、そこまで至らず全く別のデバイスが出てくるのか、今後も業界の動きは要注目と言えるでしょう。
参考
*1 折り畳みスマートフォンの一例
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1711/26/news007.html
*2 iPhone11とGalaxy Foldの重量
https://www.apple.com/jp/iphone-11/specs/
https://www.au.com/mobile/product/smartphone/scv44/spec/
*3 https://onlineshop.au.com/disp/CSfLastGoodsPage_001.jsp?GRP_ID=SCV44&dispNo=001005
*4 https://www.expansys.jp/samsung-galaxy-fold-512gb-space-silver-315780/
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