鹿島建設|トンネルシールド工事の計画立案にCIM活用で工数半減!
トンネルシールド工事は地中を掘り進める工事のため、崩落や漏水などを未然に予防するなどとくに安全管理が求められる工法です。鹿島建設はトンネルシールド工事にCIMを活用したシステムを開発し、現場適用に繋げています。ここでは、CIMにおける最前線の取り組みをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
トンネルシールド工事は安全管理が重要
まず簡単にトンネルシールド工事についてご紹介します。
トンネルシールド工事の歴史
トンネルシールド工事は、地下や海底など地中の深い部分にトンネルを掘る場合に用いられる工法で、大きなカッターのついた円筒状の切削機(シールドマシン)をゆっくり回転させながら地盤を掘削します。(*1)
初めてこの工法が使われたのは、1843年に開通したロンドンのテムズ川の下を掘った地下鉄用のトンネルで、日本では1917年に秋田県の旧国鉄の羽越線・折渡トンネルを作る工事で用いられました。トンネルシールド工法は地表から下に向かって地面を大きく掘り下げる必要がないため、現在は地下鉄などの工事に広く用いられています。
トンネルシールド工事では事故が起きるリスクがある
トンネルシールド工事では、地盤を掘り進めていくため、想定外に地盤が崩れ落ちたり、地下水がしみ出たりするなどのリスクがあります。工事の計画や安全管理はよく検討されているものの、過去には海底を掘り進めるシールド工事中に事故が起きたこともありました。
国は労災事故を防ぎ安全に工事を行うため、2017年に「トンネルシールド工事に係る安全対策ガイドライン」を策定しています。(*2)
トンネルシールド工事は安全管理と対策が重要
国のガイドラインでは、発注者や設計者・施工者など工事にかかわる者が各々リスクアセスメントにとりくむべきとしています。
たとえば発注者側は、設計者や元請施工業者に対して専門工事業者の意見を踏まえたリスクアセスメントを行わせ、結果を設計図書や施工計画に反映させることが必要です。
また設計者・施工者側には、適確なリスクアセスメントを踏まえた設計および施工計画の立案を求めています。掘進する予定の地形や地層、地質などがはっきりしない場合はボーリング調査などで確実に確かめることが重要です。結果に基づき必要があれば、発注者と協議のもと施工計画を見直します。
このようにトンネルシールド工事を行うためには、工事の計画時はもちろん施工中も掘り進めた地形に偏差がないかや漏水、ガスの発生などがないかなどの安全に配慮し続ける必要があります。施工後の想定外を減らすためには、CIMを使った工事現場の可視化と予測が重要だと言えるでしょう。
鹿島建設はトンネルシールド工事に多くの実績がある
シールド工事における昨今のニーズは、長距離化と高速施工化です。鹿島建設では多くの実績があり、大断面、大深度、非円形など多くの工法に対応しています。
また国の「i-Construction」構想を受け、2017年に「CIM推進室」を設置しました。加えて発電所新設に伴うトンネルシールド工事において、CIMを活用し始めたのです。(*3)
鹿島建設の放水路トンネル工事概要
北海道の石狩湾新港発電所1号機新設工事の土木本工事では、海底に放水路トンネルを作る必要がありました。
この工事は内径4.7mで延長する距離は1,045mです。約半年かけて海底を掘り進めていく難しさに加え、最後は海底下にすでに設置されている放水口とシールド機とを接続させる必要があります。
工事の難易度の高さから、徹底した施工予測と安全管理が求められました。
放水路トンネル工事にCIMを活用して安全性が向上
CIMでは土木工事にかかわる調査や設計、施工はもちろん、維持管理や更新に至るまでの情報管理に役立ちます。鹿島建設では、品質管理を見える化するために海底地盤内の状況をCIMデータとしてモデル化しました。
海底のCIMデータがあれば、シールド機の位置情報を視覚的に表示できます。また工事中の地盤情報として、土質や海底での土被りの量なども確認可能です。現状が把握しやすくなり、高精度なリスクアセスメントや施工管理につながりました。
掘進管理システムの情報をCIMにインプット
鹿島建設では、ほとんどのシールド工事について、シールド掘進管理システム(Kajima Shield Control System)を用い、シールド機や周辺設備からの情報を一元管理しています。
放水路のトンネル工事では、CIMデータをモデル化するのと同時に「シールド掘削管理システム」が保持しているデータをCIMの属性情報として入力しました。
その結果、シールド機のスキンプレートと、地盤を切削したあとに設置するセグメントとの隙間(テールクリアランス)が視覚的にリアルタイムでわかるようになりました。それぞれが接触しないよう位置情報を管理しながら工事が進められるようになったのです。
トンネルシールド工事の見える化のためCIMシステムを開発
2017年のシールド工事などで積み上げてきた実績とノウハウをもとに、鹿島建設ではCIMでシールド工事の掘進管理を「見える化」するシステムを開発し、2019年からは実際の工事に適用しはじめました。
シールド工事では、複数の帳票が使われていた
シールド工事の際は、シールド機とセグメントについて座標や方位、上下の姿勢(ピッチング)などを正確に管理したうえで掘進組立指示書を作成します。
従来シールド機とセグメントは別々の帳票が使われていたものの、実際は同じ進行軌跡で動くよう管理しなければなりません。大きく改善の余地があった部分であり、ここにCIMの3次元データを活用したのです。
KaCIM’Sでは掘進軌跡がシミュレーション可能
鹿島建設は、CIMをベースに掘進管理の定量的な情報を可視化して、掘進軌跡をシミュレーションするシステムとしてKaCIM’S(カシムズ)を開発し、2019年には山岳トンネルの工事に適用しました。
地中のトンネル形状を3次元モデル化すると、視覚的に以下などがわかります。
・トンネル線形
・現在のマシン位置
・組立後のセグメントの状況
・シールドマシン予測位置
・セグメント組立予測
掘進方位など一定の情報を与えると、蛇行量やシールドマシンのクリアランス、曲線施工の余掘り量などがシミュレーション可能です。
KaCIM’Sの導入で計画立案工数が半減
掘進シミュレーションの計測結果は3次元モデルに対して色分けで表示されます。これにより施工管理者とオペレーターとの情報共有がスムーズになりました。
また、3次元モデルでは、基準を超えた箇所が赤く表示されます。問題のある箇所が把握しやすく適切な掘進管理と生産性の向上につながったのです。
鹿島建設によると、KaCIM’Sを導入したことで、掘進組立指示書が自動作成できるようになりました。ガス導管を作成するシールド工事(茨城県那珂郡)に適用したところ、計画立案作成までの時間が半分になるほど短縮できたのです。
鹿島建設ではトンネルシールド工事の自動化が目標
鹿島建設では、KaCIM’Sをシールド工事の基幹システムとして活用していきたいと考えています。
まず適用する現場を増やして多くのデータやノウハウが集まれば、AI分析と組み合わせてシステムが高度化できるでしょう。シールド工事が全自動化できるかもしれません。実現すれば、より生産性が高く、安全面に配慮した工事が可能になります。
まとめ
トンネルシールド工事ではリスクアセスメントを行いつづける必要があります。緻密に施工管理をするためにはCIMで視覚的にシミュレーションすることが重要です。今後はシールド工事が全自動化できるようになるかもしれません。
参考URL
*1 http://www.jsce.or.jp/contents/hakase/tunnel/tunnel05.html
*2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000155868.html
*3 https://www.kajima.co.jp/news/press/201702/22c1-j.htm
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