CATIAと3D互換性を保ちデータ連携する方法とおすすめCAD
CATIAはハイエンド3次元CADの代表格として自動車や産業機械、医療、航空宇宙などで活用されています。
CATIAデータを扱う場合には、どのCADであれば3D互換が保てるかを知っておくことが重要です。
この記事では、CADデータを授受する際に重要となる3D互換性のポイントやCATIAとのデータ連携におすすめのCADをご紹介します。
CATIAの開発案件は分業が多い
CATIAは複雑な形状や大規模なアセンブリに対応できるため、開発には複数の人員がかかわります。(*1)
各組織の規模やCADの使用頻度などを踏まえると、全員がCATIAを使って開発にあたるのは難しいことも多くみられます。
また、CAEやCAMには3Dデータが用いられるため、CATIAのデータを各々のシステムに合うかたちに変換しなければなりません。
このことから、CATIAで開発を行う場合にはCADのデータ変換が必要です。
同時に3D互換性も非常に重要な要素だといえます。
CATIAとデータ連携をする際のポイント
CATIAと3D互換性を保ってやりとりをする場合には、3DCADがあれば何でも大丈夫というわけではありません。
ここではCADのデータ授受に必要なポイントをご紹介します。
CATIAのデータを読み込むための設計環境整備
CATIAデータを中心に設計をすすめるには、まずCADが必要です。
CATIAを導入する
CATIAとデータ連携する際に、最も3D互換性が高いのは同じCADを導入することです。
設計環境が同じであれば基本的にはデータ変換ロスがありません。
ただし、CATIAの場合、導入時の1ライセンスが300万円規模のことも多く、さらに保守などの維持管理費用がかかります。
また、CATIAはバージョンが細かく定義されているため、バージョンアップのタイミングを設計グループ全体で調整する必要があります。
サプライヤや関連会社とは自分から情報を提供して相談する余地がありますが、クライアント側の設計環境情報を調査して都度環境をあわせるのは簡単ではありません。
中間ファイルにデータ変換をする
STEP、IGESなど汎用的なデータ形式である中間ファイルに変換すると、CATIAを含む多くのCADで読み込みが可能です。
ただし、データを変換する際にCATIAの履歴が失われたり、微細な形状が欠損し正しい形状が伝わらなかったりする場合もあります。
事前に取り決められた精度で形状が再現できているかをよく確認しなければなりません。
トレランスの確認
CADが演算可能な精度(トレランス)はシステムごとに異なります。
CATIAは精度よくモデリングできるため、CADによってはCATIAのデータを読み込んでも部分的に再現できない箇所があるかもしれません。
とくに曲率が複雑に変化する自由曲面や構造が複雑な場所を含む部品などが含まれる場合には、CADシステム自体のトレランスが設計意図の範囲にあるかを確認しましょう。
データ交換ルールの整備
CATIAデータは部品データとアセンブリのデータがわかれて管理されています。
同時にファイル名やディレクトリの場所も保存されているため、それらが変わるとデータがうまく統合できなくなる可能性があります。
「CATIAデータを含むフォルダを移動して構わないか」「ファイルやフォルダの名称を変えてもよいか」など、ファイル名に関する事前の取り決めが必要です。
CATIAと他CADシステムとの3D互換状況
CATIAは建築系CADよりも機械系CADとの親和性が高くなっています。
ここではいくつかのCADをとりあげてCATIAとの3D互換状況についてご紹介します。
SolidWorks(Dassault Systèmes)
SolidWorksは、CAITAと同じダッソーシステムズ社のミッドレンジCADです。
SOLIDWORKSでは、CATIA V5のファイルフォーマットである.CATPart、.CATProductの読み込みに対応しています。
ファイル内のアセンブリ情報が認識されるので、連携しやすいCADといえるでしょう。
またSolidWorksは、中間ファイルはもちろん各CADデータの直接読み込みに強く、サポートされるファイル形式が豊富な点が特徴です。
例
・Adobe 3D PDF
・Autodesk Inventor、Maya
・PTC Pro/E、Creo
・Siemens NX
ただし、CATIAデータとしての出力ができないため、編集履歴を残したままデータのライフサイクルを回す点では不利だといえます。(*2)
Autodesk Revit(Autodesk)
建築3次元CADの代表格であるRevitは、CATIAのダイレクトインポートに対応していません。
読み込みに対応しているファイル形式は、Rhinoceros(.3dm)、.satの2種類です。
そのため、他CADと頻繁にデータ連携を行うよりは、Revit内で設計するほうが効率的です。(*3)
Autodesk Inventor(Autodesk)
同じAutodesk社の製品でも、製造業向け3次元CADであるInventorの場合はCATIAデータの読み込みに対応しています。
CATIAデータは古いバージョンに対する互換性がなく、CATIAのデータ形式に出力したとしても、バージョンが古い場合はファイルが開けません。
Inventorの場合、CATIAデータへの出力にも対応し、ファイル形式のバージョンを選択して任意のバージョンで変換が可能です。
比較的CATIAとの3D互換性が高いCADだといえます。(*4)
Fusion 360(Autodesk)
Fusion360は非商用目的で1年間の無料試用期間があるのが特徴です。
サブスクリプション契約をする場合も月5,000円前後と費用をおさえて所有しやすくなっています。
CATIAデータは、部品データ(.CATPart)アセンブリデータ(.CATProduct)ともに読み込みが可能です。
しかし、編集情報を出力する場合は、stepやIgesなどの中間ファイルに変換しなければなりません。
Fusion 360は、クライアントなどからCATIAデータの提供を受けてFusion360上、もしくはAutodesk Inventorと連携して設計を進めていく使い方が可能です。
また、CATIAデータを読み込んでCAEやCAMデータに変換するトランスレータとしての用途も考えられます。
.sat形式でのデータ出力に対応しているため、3Dプリンターとの親和性もあります。(*5)
図脳CAD3D V2(フォトロン)
図脳CAD3D V2は製造業向けに開発されたCADで、CADの基本となるプログラム部分(カーネル)にCATIA V5、V6と同じ「CGM CoreModeler」を使っています。
つまりCATIAネイティブデータ(.CATPart、.CATProduct)の読み込みが可能です。
1ライセンスが80万円とCATIAの約1/3程度で使用できるほか、CATIAのインポートに多くみられるオプションライセンスの追加が不要なので、費用が抑えられます。
各部位はダイレクトモデルとして認識され、直観的な編集操作ができるため、CATIAデータの提供を受けて部品を作成する場合などに便利です。
海外で開発されたCADは、機能名称から操作がイメージしづらかったり自動翻訳されたヘルプの意味がわかりづらかったりすることがあります。
図脳CAD3D V2は国産CADのため、海外のソフトウエアベンダーに問い合わせるよりもスムーズなやりとりが可能です。あまりCADの使用頻度が高くない場合でも戸惑いにくいCADといえます。(*6)
まとめ
CATIAはハイエンドCADであり、開発規模などによってはCATIA以外のCADでデータのやりとりをする場合もあります。
CADデータの授受を行う場合には、お互いのCAD同士でどの程度3D互換性が保てるかの確認が重要です。
CATIAのデータを扱うことになった場合には、
「使用しているCADがCATIAデータの直接読み込みに対応しているのか」
「やりとりしようとしている部品を読み込んだ場合に演算精度(トレランス)や微少形状部分などで不具合が生じないか」
などについて、事前にベンチマークをしておくと安心です。
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参考URL
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https://stg.capa.co.jp/archives/32766
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https://stg.capa.co.jp/archives/32753
*1 https://www.3ds.com/ja/products-services/catia/
*2 https://www.solidworks.com/ja
*3 https://www.autodesk.co.jp/products/revit/overview
*4 https://www.autodesk.co.jp/products/inventor/overview
*5 https://www.autodesk.co.jp/products/fusion-360/overview
*6 https://www.photron.co.jp/products/3d-cad/zunocad3dv2/