Amazonの決済システム「Amazon One」とは何か?5分で解説!
今年9月に、Amazonが手のひらをかざすだけで決済をすることができる生体認証システム「Amazon One」を発表しました。
スマホやPCに指紋認証が採用されてからしばらくたちますが、いよいよ実店舗での運用がスタートする時が来たようです。
スマホやIDカードを持たず、手ぶらで来店し決済まで完了することができる。
まさに21世紀って感じがしますね。
今回の記事ではこの「Amazon One」と関連する情報についてまとめてみましょう。
この記事でわかること
・Amazon Oneについて
・Amazon Oneは決済だけに特化したサービスではない
・Amazon Goの現状と将来の戦略について
Amazon Oneとは
「そういえばコーヒーが切れてたっけ?」そう思って近所のスーパーに手ぶらで出かける。
入り口の生体認証端末に手のひらをかざして入店。お目当のコーヒーと最近売り出されたばかりのスイーツ、ついでに雑誌を一冊棚からとってそのまま外に出る。
家に帰ってスマホで確認すると、今日買ったもののリストがすでに登録されていた。
そんな便利な世界が、すでに遠い未来の話ではなくなってきました。
Amazonは自社で運営するレジのないショップ「Amazon Go」の数店舗に、生体認証システムである「Amazon One」を配備し、運用を開始すると発表しました。
Amazon Oneは非接触型の生体認証システムを採用しており、新型コロナウイルスなどの接触感染を防ぐ効果も期待できます。
確かに今の世の中、「保護されてない手のひら」を不特定多数の人が利用する端末に直接触れるのはためらわれますよね。
まさに今の時代にマッチした、新しい認証システムと言えそうです。
「Amazon One」では、手のひらを店舗の入り口に設置してある端末に「かざす」だけで認証が通る仕組みです。
独自のアルゴリズムとハードウエアを使用して、手のひらの特徴を抽出し、そのデータをクレジットカードと紐付けることで快適なサービスを提供することができるようになります。
初回の利用時だけクレジットカードを端末に差し込む必要がありますが、一度紐付けが終われば、次回からは手ぶらで利用できる(もちろん手のひらは必要ですが、、)ようになります。*注1
技術サイドの方なら、どうやって手のひらで認証をしているのか?という原理に興味があるかもしれませんね。
しかし、残念ながら詳しい情報は公開されていません。
「カスタムビルドのアルゴリズムとハードウェアを使用して、個人の手のひらの署名を作成します。」
と紹介されているだけです。
一般的に手のひらを使った生体認証の場合、掌紋や指紋といった表面の形状で分類・特定する方法と、皮膚の下を通る静脈をスキャンする方法などがあります。
もちろん、手のひら自体の形状や大きさ、指の長さや関節の位置など多くのポイントを利用することも考えられるでしょう。
Amazonがどのような技術を応用して手のひら認証システムを実用化したのかは、今の所不明ですが、それぞれ固有の手のひらを特定し、クレジットカードと紐づけることによって決済を完了する仕組みになっています。
ここで注意する必要があるのは、手のひらの情報だけでは「個人を特定する」ことに繋がらないという点です。
Amazonもこの点には特に留意していることをアピールしています。
サーバーに登録された手のひら情報はクレジットカード決済をするためだけに使われており、他の個人情報とは紐づけられませんので、「どこの誰が入場したか」という情報はAmazon側では把握しません。
顔認証などをあえて使わなかったのは、特にこの部分を重視からということです。
やはり、ここ数年大きな問題となっている、個人情報に関する世間一般の関心の高まりへの対応を重視したいうことでしょう。
ここで紹介したような手順でクレジットカードの登録をするだけでは、過去の履歴などを閲覧することはできません。
過去の履歴などの閲覧を可能にするためには、Amazonアカウントと紐づける必要があります。
そうすることによって、PCやスマホを利用してAmazon Oneの利用履歴の確認をすることができるようになります。
ユーザー側での意識的な登録作業が必要ですので、個人情報との連携を嫌がる方がいれば、あえて登録しないという方法も選択できます。
しかし、実際Amazonアカウントをすでに持っている人であれば、Amazon Oneとの連携をわざわざNGとする人も少ないのではないでしょうか。
Amazon Oneは決済だけに特化したサービスではない
ここまで、Amazon Goでの決済システムとして「Amazon One」を説明してきました。しかし、Amazon Oneの利用場面はそれだけに止まらず、幅広い活用方法が検討されています。
例えば、映画館やコンサートの入場チケットがわりに使うことができそうです。
Google Goに限らず、一般の店舗やスーパーにおいてももちろん活用の可能性があります。また、商用ベースに利用だけでなく、オフィスへの入館チェックにも使えます。
そう考えると、Amazonが自社の店舗で運用したノウハウは、これから重要な意味を持ちそうです。
Amazon Goの現状と将来の戦略
現在、Amazon Oneはレジなし店舗として運営しているAmazon Goの一部の店舗で導入されています。
最初はシアトルにある2店舗がその対象となりますが、今後数ヶ月で他のAmazon Goへも導入される予定となっています。
また、このシステムを自社の店舗だけでなく、広く一般にも提供することを想定しており、Amazon One Webサイトで問い合わせを受け付けているなど、積極的な展開をしていくように思われます。
Amazon Goは、2016年に本社の近くに開業した現金払いの実店舗からスタートしました。
その段階では、オンラインショップを主たる事業とするAmazonが、コスト面で優位性がない実店舗の運営に本格的に乗りだすつもりだとは思わなかった方が多いのではないでしょうか。
しかしその後、2018年になってレジを不要とする「キャッシュアウトレスシステム」を導入する段階でAamzonの狙いともいうべきポイントが明らかになってきました。
2次元QRコードを使ったキャッシュレス決済や、電子マネーの普及さらに仮想通貨など、今一番ホットな分野でもあるのが、これまでの金融取引とは違った新しいシステムの実用化です。
Amazon Oneはクレジットカードと紐つけるシステムですので、ベースとしてはレガシーな分野とも言えますが、ユーザーにとっての利便性は、先に挙げたキャッシュレス決済を上回るかもしれません。
なにせ、手ぶらでOKですから、スマホもカードも持ち歩く必要がありません。
Amazonは、2021年までに3,000店舗のAmazon Goを展開するという計画があることもすでに報道されています。
これまでのAmazon Goでは、スマホアプリを使うというものでした。
客は入り口でスマホの画面をスキャンし、あとは欲しいものを適当にショッピングバックにいれてそのまま店を後にすれば、自動で代金が請求されるという仕組みです。
各店舗には天井部分や商品陳列棚に山ほどのカメラが設置してあり、どの客がどの商品を購入したかを瞬時に判断しています。
例えば、一度手に取った商品を棚に戻すという行為もきちんとトレースされ、間違えて請求されることもないとのことです。
カメラ性能、認識・判断するプログラムが非常に優秀であることが、実際の運用を通じて検証されています。
もちろん、何らかの理由で間違えた請求が来ることもあるようですが、その場合は購入履歴から確認し、修正を依頼することができるようになっています。*注2
もともと、Amazon Goで採用していた「キャッシュレスアウトシステム」も、映画館などの他の小売店にも導入する方向で計画していたことがCNBCによって報道されていました。
今回のAmazon Oneは、この延長線上にある話ということになります。
Amazonと言えばオンラインショップをはじめとして、Amazonプライムビデオ、AWSなどインターネットサービス事業者としてのイメージが強いと思います。
しかし、当然のことですが巨大な物流ネットワークを運営し、各地に集配拠点を持つなどリアルでの事業にも強みを持っている企業です。*注3
しかも、これまでにないピックアックシステムを考案し実際の運用に活かすなど、リアル世界でも革新的な成果を出し続けている企業でもあります。
巨大IT企業として最先端の技術を導入しながら、物流という世界中に競合のいるリアル世界でも快進撃を続けています。
これ、もはや敵なしじゃないですかね?
Amazon Goが最初のアナウンスされた時は、「最新技術のテスト用では?」という感じを受けたものですが、どうやら本気でリアル小売業界にも進出してきそうな気がします。
【まとめ】
今回の記事では、生体認証を利用した決済システムである「Amazon One」についてまとめてみました。
最近はコンビニで買い物するにも、携帯キャリア系の決済や各種電子マネーなどバリエーションが多すぎて、どれがお得なのかちょっと戸惑ってしまいます。
もういっそのこと、何も持たずに手のひらかざすだけで決済できれば、どれだけスッキリするでしょうか。
そうした未来が、もしかしたら意外にすぐ近くに来ているのかもしれませんね。
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■参考文献
注1
Amazon ”Introducing Amazon One?a new innovation to make everyday activities effortless”
https://www.aboutamazon.com/news/innovation-at-amazon/introducing-amazon-one-a-new-innovation-to-make-everyday-activities-effortless
注2
Gigazine 「Amazonがレジなし店舗「Amazon Go」を2021年までに3000店に増やす方針」
https://gigazine.net/news/20180920-amazon-go-new-open/
ソース
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-09-19/amazon-is-said-to-plan-up-to-3-000-cashierless-stores-by-2021
https://www.engadget.com/2018/09/19/amazon-3-000-cashierless-go-stores-2021/
注3
「Amazonのレジなしコンビニ「Amazon Go」のシステムが空港や映画館にも導入される可能性」
https://gigazine.net/news/20191001-amazon-license-cashier-less-tech/
ソース
https://www.cnbc.com/2019/09/30/amazon-go-cashierless-tech-planned-for-airport-stores-movie-theaters.html
https://www.pocket-lint.com/apps/news/amazon/149582-amazon-might-license-its-cashier-less-amazon-go-tech-to-regal-cinemas