日本提案のドローン国際規格「ISO23665」の重要性
タイトル:日本提案のドローン国際規格「ISO23665」の重要性
日本はこれまでドローンの運用に関する環境の整備が遅れているとされてきましたが、これは決して日本におけるドローンへの意識が低いということではありません。最近ではこれまで培われてきたドローンへの取り組みが身を結ぶケースも増えてきており、今後一層の盛り上がりが期待されています。
中でも2021年に発行されたドローンの国際規格「ISO23665」は、日本発の規格として大いに注目を集めています。「ISO23665」がどのような規格で、どんな可能性を秘めているのかについて、ご紹介します。
目次:
①ドローン国際規格「ISO23665」の概要
②ドローンパイロットを定義づける国際規格
③「ISO23665」の目的と今後の展望
ドローン国際規格「ISO23665」の概要
世界共通の規格を策定する国際標準化機構(ISO)は、ドローンの操縦トレーニングに関する規格「ISO23665」を2021年1月に発行することを発表しました*1。「ISO23665」は日本で初めてのドローンに関する国際規格であるとして、大いに期待されています。
ドローン人材育成の標準化を促す規格
「ISO23665」が扱うのは、主にドローンの操縦資格に関する育成の指標を標準化するものです。「無人航空機システム- UASの運用に携わる人材育成のための訓練」として規格化されており、今後はこの規格に基づくドローンパイロットの育成などが進められる予定です*1。
ドローンの操縦には車や航空機の操縦と同様、目的に応じたノウハウが必要です。日本にもドローンパイロットの育成を専門とする養成所は存在しますが、国際規格としてドローンの操縦を規定づけるものは現在存在していません。ドローンのモデルに応じて、各スクールが独自に定めたカリキュラムで育成が進められているのが現状です。
そこで新たに生まれたのが、今回の「ISO23665」という規格です。ドローンの指導内容を国際標準にすることで、グローバルに通用するドローンパイロットの資格の創出や、グローバルなドローン運用の創出を促進します。
国際標準化に必要な条件
「ISO23665」の国際標準化に際しては、多くの条件を乗り越える必要がありました。UASの定義から始まる一般部門、機体製造や保守管理の部門、人材育成のオペレーションに関する部門、検査の手続きや評価システムを司る部門など、規定分野は多岐に渡ります2。 また、国際標準として認可されるためには、複数の加盟国から形成される技術委員会において、参加国全員の認可が必要になります。予備段階から承認段階に至るまで、7つものステップにおいて承認を得なければならず、非常に厳しい条件下のもとで国際規格が制定されています3。
今回の規格化には一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が合意形成に向けて奔走し、無事認証を得ることに成功しました。
ドローンパイロットを定義づける国際規格
「ISO23665」では、ドローンの操縦訓練に必要なカリキュラムが事細かに制定されており、単なる知識だけでなく、技能や態度までもが標準化されています。その内容について見ていきましょう。
全部で9つからなる規格要件
「ISO23665」では、全部で九章構成となっているのが特徴です。規格が適用される範囲についての定義づけが行われ、用語と定義、略語、訓練期間と訓練資源、評価プロトコルに至るまで、事細かな説明が紹介されています*4。
これらの定義づけを行うにあたって、参考となる文献などの情報もまとめて記載されています。「ISO23665」の優れている点は、規格化によって均一化されたドローンパイロットの創出を促すだけでなく、ドローンを学習する上の目安にもなる点です。
ドローンについて、何を学べば良いのか悩んでいる人にとっても、この国際規格は大変意義のある存在です。
「ISO23665」が定める規格の意義
「ISO23665」においては、冒頭に規格の意義についても言及されています。「UASの運用に携わる者が適切な教育を受け、必要な知識と技能を確実に身につけることを支援するもの」といった文言にもあるように、ドローンの学習の門戸を広げてくれる可能性が期待できるでしょう。
また、今回の企画が国際標準化されたことによって、規格に基づいた資格の習得により、グローバルなドローン人材の育成も推進が期待されます。ドローンは民間の開発が著しいだけに、自社設計のドローン操縦にスキルが偏り可能性も懸念されます。国際標準の操縦がメーカーにも普及することで、規格化された操縦方法の登場にも期待が持てます。
特定のメーカーのドローンに依存しない、グローバルスタンダードなドローンの普及を促進します。
「ISO23665」の目的と今後の展望
国際的な規格である「ISO23665」が日本を中心に策定されたことで、今後も様々な展開が期待されます。
日本のプレゼンス向上につながる一歩
まず、ドローン開発における日本のプレゼンス向上は、大きく進むでしょう。日本は法整備の面からもドローンの運用が厳しい環境にあるため、ドローン産業には参入障壁の高い地域でもあります。しかしパイロット育成に関する規定が日本で生まれたことで、これに基づく法整備も国内で進み、より円滑なドローン運用が期待できます。
比較的特殊な運用環境にある日本のカリキュラムが世界で浸透すれば、日本がグローバルなドローン市場から追放されるリスクも小さくなるでしょう。さらなる国内のドローンパイロットの育成やドローン開発も促し、ハードや人材面における積極的な輸出も進められます。
国際的なドローン教育を日本が主導できる可能性も
また、「ISO23665」はドローンパイロットの標準的な技能を規格化したものであるため、今後の人材のあり方を方向付ける規格でもあります。今回の規格の採択にあたっては、JUIDAがこれまでに積み重ねてきたドローンパイロットのトレーニングに基づいています*5。そのため、日本ではすでに規格に最適化されたカリキュラムが全国に普及しており、国際標準のトレーニングが確実に受けられる環境が整備されていると言えます。
世界各地で規格に基づくトレーニングを実施する際、あらかじめ日本で講習を受け、世界各地のトレーニングプログラムへ反映される可能性もありそうです。国際的なドローン産業における日本の地位は、相対的に向上していくでしょう。
おわりに
ドローンは自律飛行が可能であるとは言え、結局のところ人間が何らかの形で目的に応じたコントロールを行わなければなりません。
人間によるコントロール方法を方向付けた、今回の規格の重要性は、それを踏まえると相当高いレベルにあると言えます。「ISO23665」の登場によって、日本のドローン産業はますますの発展を迎えることになりそうです。
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参考
*1 Drone Tribune「初の日本提案ドローン国際標準が1月26日に発行へ 操縦トレーニングの「ISO23665」」
https://dronetribune.jp/articles/18917/
*2 上に同じ
*3 上に同じ
*4 Drone Tribune「ISO、ドローンの操縦訓練に関する国際規格を2月2日付で発行 日本提案がベース」
https://dronetribune.jp/articles/18990/
*5 *1に同じ