マーケティングに新たなパワーを与える「Unity Forma」とは何か
Unityが、マーケティングの効率化とスピードアップに役立つ新しいツール「Unity Froma」をリリースしました。
Unityってゲームエンジンだったはずですよね?マーケティングと、どのような関係があるのでしょう?
実はUnityは、ゲーム分野以外での利用についても力を入れています。今回は、Unity Formaの概要と、フォルクスワーゲン社での具体的な活用事例についてご紹介します。
この記事でわかること
・Unity Formaの概略とメリットについて
・フォルクスワーゲン社での活用事例
・Unreal Engineとの違いについて
Unity Formaの概略とメリット
Unityのオフィシャルサイトでは、次のような文章が記載されています。
【マーケティング担当者の仕事は、「お客様の心を掴み、購入者に変えること」と位置付けるとしましょう。ただし、そのために必要な営業ツールを作るのには多くの時間・労力・膨大なリソースが課題となります。そこで登場するのが「Unity Forma」です。】
Unity Formaの紹介文を引用してみましょう。
【マーケティングに活用できる 3D データを簡単に準備し、インタラクティブなリアルタイム 3D 製品コンフィギュレーターや画像などを使用することで、製品を披露できるよう支援します。】
要約すると、簡単に3Dデータを活用したコンテンツを作れる便利なツールということのようです。
では、仮に自動車販売の営業担当者の立場になって考えてみましょう。
営業担当者は、販売する自動車の車種・装備品・カラーなどを選択したら、自動で見積もりが計算されるシステムが欲しいと考えています。
しかし、グレードによって選べる装備品やカラーなどが違ったりするため、全部を覚えるのは大変です。そんな時、リアルタイムで画面上の3Dモデルが変化し、実際に目で確認できるのであれば、わかりやすく間違いもありません。
さらに、3Dで表現しているのであれば、視点を変えて色々な角度で見ることでができたり、車内をウォークスルーすることができれば、もっとユーザー体験を素晴らしいものにできるでしょう。
色々な背景を組み合わせたり、画面上で走らせてみたり。さらには、実際に運転席でハンドルやコンソールのパネルなども操作できる、そんなインタラクティブなシステムにしてみてはどうでしょう。
自分の希望に応じてカスタマイズした車両を、リアルに近い感覚で見ることができれば、顧客の購入行動を後押しする強力なツールになりそうです。
販売店内の端末で、精巧で美しい3Dモデリングされた車が自然な街並みで走る姿を顧客に見せることができ、さらにリアルタイムで見積もり金額や納期まで把握できるのであれば、とても便利です。
さらに、このコンテンツをホームページ上で公開することにより、自宅にいても店舗と同じことができるようになれば、広範囲の顧客を呼び込む効果も期待できるでしょう。
Web上での見積もりシステムは、PC購入時などですでに利用したことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし自動車となるとカタログスペックだけでは、見積もり取得するには情報が足りません。
やはりグレードや、カラーなどの違いによる質感や高級感、搭乗した時の快適性や車内空間の状況など、目で見たり実際に乗って確認したいものです。
しかし、全てのバリエーションを実車で準備するのは不可能ですので、このような3Dコンテンツとして疑似体験できるシステムがあれば、十分に訴求することができるでしょう。
とはいえ、実際にこのようなシステムを構築しようとした場合、頭の痛い問題が山ほどあります。
全車種に対して全てのバリエーションを作るとなると、大規模なシステムになってしまいます。さらに、3DコンテンツやWEBへの公開、その上インタラクティブ性も持たせるとなると専門性が高くなるため、とても社内で構築できるものではなくなってきます。
当然、システム構築を外注することになりますが、コンペから選定、データの受け渡し、レビューを経て運用までと考えると、一体どれだけの時間と費用がかかるか分かりません。
しかも、その間に新しい車種が発売される場合もあり、タイムリーに更新する必要性も出てきます。
実際、自動車メーカ―の製造部門では、各車輌のCADデータは当然持っていますし、そのデータから3Dモデリングするのは、それほど難しくはありません。
全ての装備品やカラーと対応車種、グレードや価格のリストももちろんあります。データは全て社内に揃っているのに、それらを統合した上でビジュアライズして表示するツールがないことが問題なのです。
さらにシステム化した場合、データの出力先が従来のようなパンフレットなどの紙媒体だけではなく、PCやモバイル端末、VR/AR技術を使った体験型のシステム用など多岐に渡るため、それぞれに応じた構築も必要となります。
このような多くの問題を解決するのが「Unity Form」という訳です。
Unity Formを使ったシステムの場合、必要な作業は基準となる車両のマスターデータと、装備品やカラーなどのバリアントデータを放り込むだけです。それだけで、リアルタイムで3Dモデリングや各種バリエーションを生成し、様々なインタラクティブ性を重視したコンテンツを作ることができます。
さらに出力先も豊富であり、WEB・モバイル用・静止画に動画・AR/VRコンテンツなど、自動で作成することができます。*注1
Unity Formaを利用するメリット
では具体的にUnity Formaを使うと、どのようなメリットが得られるのかを確認していきましょう。
最大の特徴は一行もコードを書くことなく、必要なコンテンツの制作が完了することです。
マーケティング担当者にとって必要なものは、最先端のIT技術に精通することでも3Dコンテンツを作成するために必要なコーディングの才能でもありません。顧客に対して訴求力のある魅力的なコンテンツだけです。
しかし、その制作過程が最先端であればあるほど、複雑で高度な技術が必要となるため、これまでは専門業者に外注するしか方法がありませんでした。
外注により、優れたコンテンツはできるかもしれませんが、コスト面や制作にかかる時間については妥協せざるを得ないこともあります。
満足のいくシステムができればそれでも良いですが、コミュニケーションエラーにより、期待とは程遠いコンテンツになってしまうことも少なくありません。
しかし、Unity Formaを利用することによって、コードレスで作業が完了できるのであれば、マーケティング担当者レベルでも、自由にコンテンツを制作することができるようになります。
この一点だけでも、いかに素晴らしいツールであるかが、わかるのではないでしょうか。
自社内で作業を完結することができた場合、それに付随するメリットとして、コストダウンや成果を得るまでの時間の大幅短縮、変更や修正に対する迅速な対応など、多くのことが考えられます。
「マーケティングのプロフェッショナルのニーズに合わせて作成されたインターフェースを使用して、リアルタイム 3D コンフィギュレーターや、その他のコンテンツを短時間で制作できます。」
というUnityの説明は、優れたUIで直感的に操作可能なツールであることを予感させます。
さらにUnityが提示している6項目のメリットについて、概略を紹介しましょう。
【6つのメリット】
1 コードレスのワークフロー
2 より短時間で市場に投入
3 シームレスで費用対効果の高いコラボレーション
4 複数チャンネルへの公開
5 没入型の製品体験
6 最大の拡張性
1は前述したとおりです。
2・3はコードレスな上に、データ処理の自動化などによって得られる効果です。
4・5はWEBブラウザやモバイル端末などへの出力、AR/VRへの対応、リアルタイム3Dモデルの出力によるユーザー体験の向上などを表しています。
さらに技術があればカスタマイズも可能であり、拡張性が高いことを6でアピールしています。これを見る限り、無敵のツールと言えるのではないでしょうか?
フォルクスワーゲン社での具体的な活用事例
実際にフォルクスワーゲン社において、Unity Formaを用いたコンフィグレーションの制作について紹介されています。
フォルクスワーゲン社のグローバルデジタルマーケティング責任者である「Candido Peterlini 」氏の言葉として、
「Unity と出会って、オンラインのコンフィギュレーターにおける製品体験を強化するための、適切なパートナーを見つけたという思いです。Unity Forma には、様々に設定を変えられる製品ビジュアライゼーションなど、より高速により高品質なリアルタイムコンテンツを提供するための機能が搭載されています。」
と紹介されています。
フォルクスワーゲン社では元々、Unityを導入していた経緯があることから、Unity Formaについても、いち早く取り組みをスタートさせることができたのでしょう。
「Unity Forma ~リアルタイムエンジンを活用した 費用対効果の高いマーケティングソリューション~」と題して、フォルクスワーゲン社のUnity Forma導入事例が、YouTubeで公開されています。*注2
この動画の22:30ごろから、実際の制作時間短縮について具体的な数値が示されています。それによると、なんと従来12週間かかっていたものが、Unity Formaの活用によって3週間になったという事実が公表されています。Unity Formaによって、75%もの工数削減につながったというのは驚きです。
しかも、外注することなく自社内の制作チームで作業が完了するというのですから、その効果は絶大です。
フォルクスワーゲン社では大量の商品を扱っているため、並行して20~40種類のモデルケースに利用することができれば、その効果はとても大きいと言えるでしょう。
新しい車種を発売する際に、強力な販促用の3Dコンテンツをスピーディに提供できることは、大きなメリットとなるはずです。
Unreal Engineとの違いについて
ゲームエンジンでは、UnityとUnreal Engineが事実上、市場を二分するライバルとして多くのゲーム制作に使われています。
現在はUnityがカジュアルユーザー向けのゲームに使用され、Unreal Engineが上級者向けのゲーム開発に使われるという傾向があり、うまく住み分けがされつつある状況です。
リアルタイム3Dレンダリングで、必要なビジュアルデータを生成し、インタラクティブ性の高いコンテンツを作成することができるゲームエンジンは、ゲーム以外の分野でも利用が期待されています。
例えば、ここで紹介したような自動車メーカーでの販売促進用コンテンツの作成や、住宅会社で使われる完成建築物をウォークスルーで確認できるコンテンツ、他にも映画制作現場やアニメーション制作など数多くの応用事例が考えられます。
さらにAR/VR技術を応用すれば、医療分野で若い研修医に手術のトレーニングをする時など、実際の患者を使わずにバーチャルで実施することも可能になります。
Unityは幅広い分野での応用に積極的に取り組んでおり、Unreal Engineとの違いを明確にしています。
【まとめ】
1980年代、Macintoshの登場をきっかけとしてDTPが普及し、誰でも気軽にチラシやポスターなどを制作することができるようになりました。
DTPの普及には、Macintosh以外にもTruetypeフォントや、レーザーライターなどの印刷機の登場に加えて、Illustrator・PhotoShopなどの強力なDTPソフトが大きな役割を果たしています。
「ゲーム制作の民主化」をテーマにしている、Unityの新しいツールである「Unity Forma」を見ていると、DTP黎明期を彷彿とさせます。この分野でIllustratorやPhotoShopのようなキラーソフトへと成長してくのか、これからも注目して行きましょう。
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■参考文献
注1
Unity Forma
https://unity.com/ja/products/unity-forma
注2 Unity Forma ~リアルタイムエンジンを活用した 費用対効果の高いマーケティングソリューション~
https://www.youtube.com/watch?v=bxSlzHwIRtI